いよいよ5月25日に開幕するプロ野球交流戦。昨季は新型コロナの感染拡大によって中止されたが、今季は3連戦×6カードの18試合制で行なわれる。「2年ぶりとなる今季の交流戦は例年とは異なる展開になりそうだ」――広島の監督、ソフトバンクのヘッドコーチなどを歴任した野球評論家・達川光男氏はそう展望する。レギュラーシーズン同様に「9回打ち切り、延長戦なし」が適用される。また、今季は両リーグで新人選手が大活躍している一方、外国人選手の来日遅れも影響し、各球団の戦力が大きく変わっている。セ・パ両リーグの野球に精通する達川氏はどのように見ているのか。
「交流戦も日本シリーズも“パ高セ低”と言われてきたけど、理由のひとつはセが本拠地のアドバンテージを活かせていないことにある。セのチームが勝ち越すためには、DH制のないホームゲームを絶対に落とさないことが絶対条件です。私がソフトバンクのコーチだった頃もそうだったが、パの投手は交流戦の直前にバント練習をする程度。それも先発投手だけ。1日や2日の練習で送りバントなんてできるようになるはずもない。実質、パは8番バッターまでで攻撃は終わる。その点、セのピッチャーは送りバントも上手いし、簡単に三振しない選手が多い。セの監督は“9人目のバッター”の差をもっと意識したほうがいいと思うね」
そのうえで達川氏がポイントに挙げたのは、今季の「特別ルール」だ。
「9回打ち切りになったけれど、一軍のベンチ登録は(一昨年の交流戦の)25人から26人へと1人増えている。試合は長くならないけれど、選手起用には1人分の余裕がある。継投や代打を積極的にやりやすくなるわけです。
そこで私が注目するのは、DH制のないゲームで投手に打席が回ってきた局面。投手の打撃をもともとアテにしていないパは見切りをつけやすい。18年のソフトバンクと広島の日本シリーズ第1戦では、ソフトバンクの工藤(公康)監督は2点ビハインドの5回表にエース・千賀滉大(28)に代打・デスパイネ(34)を送って同点に追いついた。そうした起用が増えるはずです。
この時は成功したが、もし裏目に出れば“エースの無駄遣い”になってしまう。楽天やオリックスはじめ先発投手が充実しているパのチームにとって、ハイリスクな作戦になる。一方、今季のセは阪神のスアレス(30)や広島の栗林良吏(24)らリリーフ陣が充実している。5回より前に先発投手に代打を送るケースはセのほうが増えるかもしれませんね」