2020年7月24日午後8時、東京・代々木の新国立競技場には世界各国から7万人を超える観客が詰めかけ、華々しい開会式に酔いしれる。そしてテレビの中継画面には、企業のロゴが広告ボードや提供テロップに並び「最高の宣伝」になる──はずだった。それがコロナ禍で延期され、今年7月の開催も国内外から批判が高まっている。数十億円もの協賛金を払った東京五輪スポンサー企業は、この“逆風”の中、開催可否をどう考えているのか。全71社に聞いた。
質問は以下の3つ。【1】7月開催に賛成か【2】開催する場合は無観客にすべきか【3】有観客で開催された場合、社員に会場での観戦を推奨するか。回答は「賛成(推奨)」「反対」「分からない」の3択とし、各社の回答は別掲表で全文を示した。
7月開催に「賛成」と回答した6社を含め、選択肢で回答した会社が71社中8社に留まるなか、「賛成」「反対」という立場を明確にしたくないためか、選択肢以外の回答をする企業が目立った。多かったのが、“留保条件”を強調する回答だ。
〈様々なシナリオを想定し、安全・安心が確保された大会とすべく(中略)支援をしてまいります〉(ブリヂストン)
〈感染防止対策の徹底は極めて重要な課題であり、丁寧な説明と(中略)できる限りの準備をお願いしたい〉(三井不動産)
〈多くの人々に歓迎される大会になることが重要〉(日本生命)
慎重な言葉選びで、懸念を滲ませた企業もある。日清食品は〈人命を最優先に〉、コクヨは〈感染状況や医療体制によって大変難しい判断が求められると理解〉、LIXILは〈健康と安全が第一で、(中略)これが何よりも守られるべき〉との見解を示した。
日清食品には“特別な事情”もありそうだ。同社所属の錦織圭と大坂なおみが、現状に疑義を呈したのだ。大坂が9日、「人々を危険に晒す可能性があるなら、絶対に議論すべき」と発言すると、錦織も「どう安全にプレーできるか、議論する必要がある」と大坂の発言を引き継いだ。2人の発言について日清食品に問うと、〈アスリートなどから様々なご心配やご意見があることは十分に承知しております〉(広報部)と回答した。