五輪開幕まで残り2か月を切ったが、5月に報じられた各紙の世論調査では反対の声が8割超と大多数を占め、開催を目指す「五輪ムラの住人」との乖離が深まっている。
数十億円もの協賛金を払った東京五輪スポンサー企業は、この“逆風”の中、開催可否をどう考えているのか。全71社に聞いた。質問は以下の3つ。【1】7月開催に賛成か【2】開催する場合は無観客にすべきか【2】有観客で開催された場合、社員に会場での観戦を推奨するか。回答は「賛成(推奨)」「反対」「分からない」の3択とし、各社の回答は別掲表で全文を示した。
回答を見ると、「賛成」と述べたのは71社中8社。予想通りというべきか、賛否を明確にしない企業が目立つなか、「無回答を回答とする」のが新聞各社だ。『週刊ポスト』の質問に、朝日新聞社、日本経済新聞社、産業経済新聞社、北海道新聞社は回答しない旨を通達してきた。読売新聞社、毎日新聞社は「社説で見解を述べている」旨の回答をしたが、その社説でも「開催」「中止」を明確に主張しているわけではない。
そもそも新聞社が五輪の公式スポンサーになったのは、今回が初めてのことだ。元博報堂社員でノンフィクション作家の本間龍氏が語る。
「これまで報道の公平性を保つためにメディアはスポンサーになっていませんでした。それが今回は全国紙すべてがスポンサーに名を連ねている。報道が歪められていると言われても仕方がないし、国民の協力を得て世論調査をしているのに自社は回答しないのはいかがなものか」
大会開催のために医師や看護師の派遣を求められたことで医療現場から反発が出ているが、製薬大手の久光製薬も「無回答」だった。彼らと同じ最前線でコロナと闘う製薬企業ですら、五輪開催への懸念を表明できない難しさがあるようだ。
同様に反対の声を上げにくいのが、五輪ビジネスを受注する企業だ。五輪関連の空間デザインなどを手がける乃村工藝社は、〈あくまでスポンサー。IOCや組織委の決定に従うだけ〉と回答。選手村に寝具を納入するエアウィーヴ、観戦ツアーやチケット販売を認められた「オフィシャル旅行サービスパートナー」のJTBやKNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト)、東武トップツアーズといった旅行代理店は軒並み「無回答」だった。
また、警備大手のセコムは〈大会会場警備を担当する立場にありますので〉、各国から出場選手や関係者を迎える羽田空港の運営会社・日本空港ビルデングは〈受け入れ準備をしなければ大変なことになります〉と複雑な胸中を明かした。