臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、五輪開催に向けて強行姿勢を鮮明にするIOC(国際オリンピック委員会)について。
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IOC関係者から次々と強い語調でメッセージが届く度に、開催国なのに日本国民は蚊帳の外なのだという思いが強くなる。
IOCのトーマス・バッハ会長が5月22日、国際ホッケー連盟のオンライン総会で、「犠牲」という言葉を用いて発言し、「日本国民に犠牲を強いるのか」と非難された。IOCの広報は五輪関係者や五輪運動に向けた発言であるとして事態を納めようとしたが、問題の本質はそこではないだろう。
かと思えばバッハ会長は、今度は開催に向け「準備のラストスパートに入っている」と発言。開催ありきのメッセージは何をどう伝えたところで、延期または中止した方が良いという意見が8割以上という世論の反発を高めるものでしかない。そもそもバッハ会長は、なぜ「犠牲」という単語を使ったのだろうか。
今月5日には、米有力紙ワシントン・ポスト(電子版)が「開催国を食い物にする悪癖がある」として、バッハ会長を「ぼったくり男爵」と非難したばかり。東京五輪開催の是非を問う世論調査の結果と合わせ、GW中は何度もこのニュースを見聞きしていたため、バッハ会長に対するイメージは悪くなる一方だった。そんなところに、「東京五輪を実現するために、我々はいくらかの犠牲を払わなければならない」という発言が飛び出したのだから、押し付けられた感が残るだけだ。