日本美術応援団団長である美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・台東区の東京国立博物館 東洋館。2人が古代エジプトのミイラなどを見て回る。
壇蜜:『パシェリエンプタハのミイラ』は棺を見ると端正で若々しいお顔ですね。
山下:古代エジプトのミイラには社会的地位が記されているものですがこのミイラには名前と「アンクムウトの息子」としかなく社会に出る前の10代の若者と思われていました。ところが近年にCT画像で骨を鑑定したところ、30代以上の男性と判明。当時の平均寿命ではかなり高齢です。
壇蜜:裕福な家柄で無職ながらミイラにしてもらえたのですね。なぜ日本へ渡ってきたのでしょうか。
山下:東京国立博物館の前身・東京帝室博物館へエジプト考古庁より寄贈されたものです。東洋館にはエジプト以外にも中国・朝鮮半島・東南アジア・西域・インドなどの美術、工芸、考古遺物が展示されています。
壇蜜:エジプトなどの古代美術と考古資料を紹介する展示室では大きな『セクメト女神像』も存在感があります。
山下:セクメトは雌ライオンの頭を持ち、人々に癒しをもたらす女神。アメンヘテプ3世は晩年に病気がちで、病気を癒す神様を国内外から幅広く集めました。
壇蜜:今でいうアマビエですね。薬ではなく神様を取り寄せる感性が衝撃です。
【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。
壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。
●東京国立博物館 東洋館
【開館時間】9時半~17時(最終入館は閉館30分前まで)※入館はオンラインによる事前予約(日時指定券)制
【休館日】月曜(祝日の場合ならびに2022年1月3日は開館し、翌平日が休館)、年末年始、その他臨時休館あり
【入館料】一般1000円
【住所】東京都台東区上野公園13-9 ※開館情報はHPにて要確認
撮影/太田真三 取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2021年6月4日号