果たして東京五輪2020は本当に開催されるのだろうか──。新型コロナウイルス感染拡大によって1年延期となり、開催予定日が目前に迫っているが、いまなお東京都は緊急事態宣言下。再延期すべきだという声も多いのが現実だ。
開催に懐疑的な人も多い大会となった東京五輪2020の一方で、高度経済成長に差し掛かった日本を大いに盛り上げたのが1964年の東京五輪だ。経済発展の大きな引き金となった1964年は、カルチャーやスポーツの分野でもまさに“当たり年”となったのだ。
伝説的な雑誌や漫画が誕生した豊作の年
雑誌はこの年に男性週刊誌『平凡パンチ』(平凡出版、現・マガジンハウス)と、漫画雑誌『月刊漫画ガロ』(青林堂)が創刊された。昭和カルチャーに精通するコラムニストの泉麻人さん(65才)はこう言う。
「“若者ファッションの教科書”などといわれた『平凡パンチ』ですが、当時小2のぼくの教室では、さすがに話題になっていませんでした(笑い)。1964年に関する著書を執筆するにあたって、改めて見直しました。当初は露骨な裸の写真も少なく、意外に硬派な雑誌という感じでしたね」(泉さん)
日本初の青年漫画雑誌として誕生した『ガロ』では、創立者でもある白土三平が『カムイ伝』の連載を開始。その後、同雑誌には、水木しげるやつげ義春、滝田ゆう、永島慎二などが作品を発表し、伝説的な漫画雑誌として語り継がれるようになる。
そのほかに、『少年サンデー』(小学館)で『オバケのQ太郎』の連載が始まるなど、漫画の名作が多く生まれた。
文学では、映画やテレビドラマ、歌でヒットした大島みち子・河野実の『愛と死をみつめて』がベストセラーに。海外作品ではアメリカ文学を代表する青春小説の名作、J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(白水社)の日本語訳版が発売に。