緊急事態宣言の延長に伴い、大型商業施設の休業要請が一部緩和された。それにより、食料品など生活必需品売り場以外の休業を強いられてきた百貨店でも、平日の時短営業が再開されている。だが、高級ブランドのアパレルなど売り上げ不振に歯止めがかかりそうにない百貨店は、果たしてコロナ後も生き残っていけるのか──。ファッションジャーナリストの南充浩氏が考察する。
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昨年春に続いて出されている緊急事態宣言によって、宣言下にある都道府県の百貨店は再び長期休業を余儀なくされました。6月20日までの宣言延長では大型商業施設の緩和措置が発表され、時短営業を再開していますが、今春の売上高は厳しいものとなることは目に見えています。
「旗艦店」の売り上げは激減していない
東京都は百貨店の営業について、これまでなぜか「高級ブランドの営業休止」にこだわってきた経緯があり、まったく理解不能でした。「密」を回避させたいのであれば、郊外や都心のユニクロの路面大型店を営業休止するほうがよほど効率的だったでしょう。
百貨店内の高級ブランドフロアなんて、平日はもとよりそれほど客はいませんし、土日でさえユニクロに比べれば入店客数は圧倒的に少ないのです。都知事以下の認識は、インバウンドが活況だった頃かバブル絶頂期のイメージのままなのではないかと勘繰りたくなるほどです。
それはさておき、今回は百貨店ビジネスの凋落と今後の生き残り策について考えてみたいと思います。
まず、百貨店全体の売上高が下がり続けている最大の理由としては、百貨店の店舗数が地方・郊外店を中心に減り続けていることです。流通業において売上高を増やしたいなら、もっとも簡単な手法は店舗数を増やすことです。あくまでも採算を度外視していえば、店舗を出店すれば例え100円でも1000円でも売上高が稼げますし、店舗数を増やせば増やすほど売上高が増えるのは当然です。
しかし、いま百貨店の全国店舗数はすでに200店を切ったと言われています。店舗数が減った最大の理由は、地方・郊外店が閉鎖され続けているからです。逆に東京都心や大阪市内のような大都市にある旗艦店の店舗数はほぼ減っていませんし、コロナ禍による休業時を除けば、旗艦店の売上高も激減しているわけではありません。