テニスプレーヤー・大坂なおみ(23才)が全仏オープンの棄権と「うつ病」を告白したことから、それまで「身勝手だ」「会見も仕事の一つ」「未熟だ」などと批判の声が多数だった空気が変わり、心配する声が多数出た。
大坂が告白した内容は衝撃的だった。5月31日、大坂は長らくうつ病に苦しんでいたことをツイッターで発表。棄権することが他の選手が全仏でテニスに集中できるために必要だったと述べた。
棄権に至った理由を長文で述べるとともに、うつ病であること、人前で喋ることが本当に苦手であることなどを説明すると「そこまで苦しかったんだ……」といった同情論がメディアを中心に噴出し、主催者側も謝罪した。
一方、いまだに厳しい声が出ているのは一部のネットだ。「無責任」「後だしじゃんけん」といった無神経な声が書き込まれているのだ。
大坂はこれまでスポーツ以外の数々の問題に自身の意見を発信してきた、いわばオピニオンリーダー。それゆえ、ここ数年、叩かれやすい状況にあったとネットニュース編集者の中川淳一郎氏は語る。
「大坂さんはBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動をはじめとした社会的イシューに積極的に情報発信してきました。それに対して『スポーツに政治を持ち込むな』と批判され続けた。あとは試合中、怒りのあまりラケットを投げたりする行為にも『スポンサーに失礼』『子供たちに悪影響』などと批判されていました。あとは、日本国籍なのに日本語があまりしゃべれないことに対しても批判されていますし、何かと『日本人らしくない』と言われ続けてきました。これは明らかに言いがかりです。
こうした状況が続くうちに、今、5ちゃんねるでは、『彼女は何があろうが叩いても構わない』という暗黙の了解的なものができてしまった。書き込みからすると保守派の男性が大坂さんを良く思っていないのではないでしょうか。いわゆるポリコレに反発する流れは彼らの中ではありましたが、その象徴が大坂さんになり、『叩いてもいい存在』になっている。つまり、自分たちこそ被害者だ、という感情です」
だが、今回は、大坂が長年苦しんできたという、うつ病の告白だ。一線で活躍するスポーツ選手がメンタルの不調を抱えながら、それを明かすことは多くはない。それは、トップレベルで活躍する選手ほど、弱い面を見せてはいけないという意識が働くからと言われる。そんな彼女の告白に、スポーツ選手を含む多くの人たちが「勇気がある」と称えている。
そうした“決意の告白”にも、ネット民が辛辣な声を上げ続けるのはなぜなのか?