日本画家が主人公として描かれるドラマ、映画が近年、増えている。5月28日からは葛飾北斎の生涯を描いた『HOKUSAI』が公開されている。日本画家が映像作品として注目されるのはなぜか? 時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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先日公開になった映画『HOKUSAIは』、「世界で一番有名な日本人アーティスト」ともいわれる葛飾北斎の青年期を柳楽優弥、老年期を田中泯が演じ、その生涯をダイナミックに描いた作品だ。
腕はいいのに食えない毎日を送る北斎が、気鋭の浮世絵版元・蔦谷重三郎(阿部寛)の後押しで才能を開花させる。描きたいものを描くために真っ赤なふんどしを翻し、海に突進、一心不乱に筆を運ぶ柳楽北斎を見ていると、主演ドラマ『アオイホノオ』で口から炎を噴射するような勢いで作画に没頭したシーンを思い出す。
柳楽は変わり者の熱中男がよく似合うのである。そして、その熱中男がさまざまな経験を積んで、老齢となっても熱中男であり続けたというところがすごい。
江戸時代の画家を主人公にした映画は1981年、緒形拳が鬼気迫る筆遣いを見せ、美女とタコの春画場面も話題になった『北斎漫画』や正体不明の謎の画家・写楽を真田広之が軽やかさと激しさを取り混ぜて演じた1995年の『写楽』などがあったが、近年、ドラマでも増えている。
水谷豊が美人画家の大家・喜多川歌麿役で登場した『だましゑ歌麿』シリーズは2009年から2014年まで続き、2017年には宮崎あおいが北斎の娘で自身も絵師であるお栄を演じた『眩~北斎の娘』、今年1月には京都の商人出身の絵師・伊藤若冲を中村七之助が演じた『ライジング若冲』も放送された。