誰もが憧れるものの、なかなか現実にならない“夢の馬券生活”。「JRA重賞年鑑」で毎年執筆し、競馬を題材とした作品も発表している作家・須藤靖貴氏が、JRAでも大活躍中のフランスからの騎手クリストフ・ルメールの“オッズ1倍台馬券”について考察する。
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長雨や日照りといった自然現象に対し、西洋人は抗い、われら日本人は調和するという。調和というより屈服だろうか。諦観から情緒が湧いて俳句などが生まれる。今の時季なら「五月雨をあつめて早し最上川」である。
ここで唐突にルメールだ。太陽のごとき存在感を放つトップジョッキーに調和すべきかどうか。オッズ1倍台の人気馬の単勝を買うか。その馬を3連単の軸にして、ヒモ荒れでも狙うか。
ここはなんとか抗いたい。どう外すかである。俳句もいいけど、ルメール外しに関する格言をひとつふたつひねり出せれば面白い。
「単勝オッズ1倍台のルメール、けっこう飛んでない?」という友人の一言をヒントに、これを検証。2020年1月から今年5月1週まで、JRA-VAN(TARGET)を使ってデータを取ってみた。
ルメールの単勝オッズ1倍台(もちろん1番人気)は189レースある。勝ち切ったのは87回。4着以下は40回。2割は飛んでいる。「重賞ではひときわ強い」なる評価も根強いので、重賞に限っては1番人気(オッズ限定せず)のデータを。41回中15勝、でも17回飛び。飛び率4割超え。飛ぶ飛ぶ。「ルメールでオッズ1倍台なら」は全幅の信頼とは言えないかも。「ルメールだからこその人気」かもしれないのだった。
そのときに勝ったのは? ルメール・キラーだ。
重賞では福永3勝(2着1回)と目立つが、横綱同士の取り組みだから驚くこともない。オッズ1倍台で飛んだ40レースに戻ると、石橋と横山武が3勝ずつ。石橋は3着4回で、計7回も出し抜き、重賞でも2勝と気を吐いている。
ルメール・キラーは石橋。「ルメールのオッズ1倍台が飛ぶときの3着内率.175 」。キラーと呼ぶにはエビデンスが頼りないけど、データによれば川田でも戸崎でもデムーロでもなく石橋なのだ。ルメールのオッズ1倍台がなんか怪しいとき、もし石橋がいれば狙ってみたい。