春のマイル王決定戦。最強牝馬に加えて多士済々の面々が揃った。競馬ライターの東田和美氏が考察した。
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オークスのソダシ、ダービーのエフフォーリアと単勝1倍台の圧倒的人気馬が続けて敗れた。なので今週もグランアレグリアの「死角」をほじくり出してみる。
2006年以降、重賞級の古馬牝馬のほとんどは、ヴィクトリアマイルを目標にするようになった。広くて紛れが少なく、直線が長くて言い訳ができないコースでの戦いは、前年にクラシック戦線で活躍したエリート牝馬の出走もあり、文字通り女王を決めるレースとしてふさわしいものになった。
牝馬同士とはいえGⅠ。たとえここで好走したとしても、やはり普通の重賞よりはるかに消耗が激しいはずだ。
昨年までのヴィクトリアマイル15回の勝ち馬のうち、安田記念へ駒を進めたのはわずかに5頭。連勝したのはウオッカただ1頭だ。ヴィクトリアマイルに出走し、中2週で安田記念に向かった馬ものべ25頭のみ。ヴィクトリアマイルでは【5 4 3 13】で19頭が掲示板に載り、二桁着順はわずかに2頭だったが、安田記念では【2 3 1 19】。ヴィクトリアマイルで惜しい競馬をして、安田記念で勝ったのもウオッカただ1頭で、二桁着順馬は10頭。3冠牝馬アパパネも、GⅠ8勝のアーモンドアイも連勝はかなわなかった。牡馬相手という以上に、頂上を狙う馬ばかりが集まるGⅠ連戦の過酷さを物語っている。
秋の中距離路線では天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念というGⅠ3走が最強馬の王道だった。牝馬ではブエナビスタが4歳時と5歳時に、ジェンティルドンナが5歳時に、1シーズンで上記GⅠを3走しているが、いずれも1勝ずつに終わっている。なおブエナビスタは3歳春に桜花賞とオークスを勝っているが、GⅠを3走した3歳秋と、4、5歳春の各シーズンは1勝止まりだった。これだけGⅠに出走するのは凄いことなのだが、勝つのはもっと大変なのだ。
またウオッカは3歳の春に桜花賞、ダービー、宝塚記念と使ってうち1勝。秋には秋華賞、(エリザベス女王杯は取消)ジャパンカップ、有馬記念と使ったが1つも勝てなかった。ようやく5歳春、ドバイデューティフリーを皮切りに、ヴィクトリアマイル、安田記念と2勝をあげた。近年1シーズンにGⅠを3回使って2勝した牝馬はウオッカだけ。リスグラシューやアーモンドアイは、1シーズン2走までしか使っていない。
グランアレグリアは2歳時3歳時にそれぞれ3走のみ、4歳時は春秋2走ずつと大事に使われてきた。2歳秋にはサウジアラビアロイヤルカップを勝ったが、阪神ジュベナイルフィリーズには1週足りないからと朝日杯フューチュリティステークスを使ったほど。3歳秋もスプリンターズステークスを自重して阪神カップのみ。4歳になった昨年春もヴィクトリアマイルをスキップして安田記念に駒を進め、ヴィクトリアマイルを経てきたアーモンドアイを破った。
それがこの春は今回がGⅠ3走目、しかも初めての2000m大阪杯からのスタート。ヴィクトリアマイルからの中20日というレース間隔はこれまでで最も短い。
もちろん平成の名伯楽・藤沢和雄調教師のこと、馬にとって無理があるローテーションは組まないし、状態に少しでも気になるところがあれば白紙に戻したはず。ほんの少しの「見えない疲労」も見逃さないはずで、出走してくるからにはなんら問題がないはずだ。