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新型コロナウイルスの感染は、自分の力ではどうにもならないことばかり。いくらマスクをして手洗いをしても、近くに感染者がいれば防ぎようがない。しかし、身体がコロナを撥ね付けられたら……そんな願望が「免疫力」ブームを生んでいる。でもちょっと冷静になって考えたい。「免疫力」って、そもそも何なのだろう。
食品では「アップ効果」を謳えない
『コロナに勝つには免疫力!』
『免疫力アップで病気知らず』
新聞や雑誌では「免疫力」に関する記事や広告が並び、スーパーやドラッグストアでは「免疫力」を謳うお手製のポップが目を引く。
新型コロナへの感染予防対策として免疫力に注目が集まり、免疫力に効果があるとされる健康食品の売り上げが伸びている。
日本食糧新聞によると健康関連食品の2020年の市場規模は前年より約4%増の1兆5000億円に達したと見られている。併せて、サプリメントや錠剤といった栄養補助食品の売り上げも伸びていて、なかでも免疫機能の調節に関わるとされるビタミンDのサプリの昨年の売り上げは前年比2倍の4億8000万円に上るという調査もあり、驚異的な市場拡大が窺える。
ただし、免疫力ブームは一部で弊害も生んでいる。警鐘を鳴らすのが消費者庁だ。
「新型コロナの感染が広まるなかで、コロナに対する効果を謳った商品が出ると予測して広告の監視を行なってきました。昨年3月から現在まで144事業者、167商品に対して景品表示法(優良誤認表示)と健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)に基づいて表示の適正化について改善要請を行なっています」(消費者庁表示対策課)
今年3月にはサプリを摂取するだけでコロナ感染への予防や治療の効果を得られるかのような広告を出したとして、消費者庁はこのサプリを販売する健康食品会社に対し、景品表示法に基づき、再発防止を求める措置命令を出した。その際に問題視されたのは〈免疫力アップでウイルスに負けない〉という宣伝文句だった。
同命令は「改善要請」よりも重い処分で、従わなかった場合の罰則や売り上げが一定以上あった場合には課徴金も発生する。
「『免疫力アップ』は身体の構造機能に影響を及ぼすということで、医薬品的な効能効果の標榜とみなされ、医薬品医療機器等法第68条(承認前の医薬品の広告の禁止)に抵触する恐れが出てきます。医薬品以外の食品(飲料、健康食品含む)で謳えるのは、あくまで『栄養補給』や『健康維持』といった現在の状態の維持まで。
『免疫』に関する効果を謳うには、医学的なエビデンスを提示する必要があります。今のところ消費者庁が食品で『免疫』に関する表示を認めているのは、昨年11月に発売されたキリングループの機能性表示食品『イミューズ』のみ。それも認められたのは『免疫機能を“高める”』ではなく、『免疫機能の“維持”』という表記です」(同前)
食品で“免疫力アップ”と謳うことは基本的にNGとされているのだ。