フィギュアスケート評論家の佐野稔さんも、7月のDOIは羽生選手にとって大きな意味を持つと語る。
「シーズン最後の北京五輪を10合目とするならば、DOIは登り始めの1合目。勝ち負けの世界ではないところで、ピークに向けて少しずつプログラムを試していくには絶好の機会なんです。しかもお客さんの前で滑ることは、自分の技の出来具合や感覚をつかむうえでも非常に重要です」
カナダに練習拠点を移して以降、羽生選手は地元カナダで開催されるオータム・クラシックを始動の場に選んできた。だが、昨年はコロナ禍で大会が中止になり、その影響がシーズンの最後まで尾を引いたともいわれている。
「シーズンの最大目標だった世界選手権でネイサン・チェン選手(22才)に敗れましたが、羽生選手のなかには“もう少し自分の納得のいく滑りがしたかった”という思いがあったのでは。今年もオータム・クラシックが開かれるかどうかは不透明な状況なので、羽生選手としては中止の可能性も考えておく必要がある。だからDOIを大切な道筋の1つとして位置づけているのだと思います」(佐野さん)
羽生選手自身は北京五輪への出場を表明していないが、もし五輪3連覇となれば、1920年、1924年、1928年で3連覇したスウェーデンのギリス・グラフストローム選手以来、史上2人目となる。
「五輪3連覇は歴史的な偉業ですから、出ると言い切ることで自分を追い込むことになるのが嫌なのでしょう。でも、彼がDOIで何を滑るかでこのシーズンをどのように描いているかがわかってくると思います」(佐野さん)
もしかすると7月には、羽生選手の新SP、そして前人未踏の4回転アクセルが見られるかもしれない。
※女性セブン2021年6月17日号