父親が運転する車のドアをいきなり開け、車外に身を投げた息子は、高速道路で後ろから走ってきた中型トラックにはねられ、わずか25年の生涯を終えた──。そんなショッキングな出来事が、厚労省の報告書に克明に記録された理由は、彼が自死の4日前に、新型コロナワクチンを接種した医療従事者だったからだ。
厚労省は医療機関や医師に新型コロナワクチンの接種が原因によるものと疑われる症状の報告(副反応疑い報告)を義務づけ、厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に提出、公表している。
前述したケースは「新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要」の「事例46」にある。患者は〈25歳の男性〉で、医療機関から〈ワクチン接種が誘因となった疑いを否定できず報告するもの〉として概要が報告されている。
〈病院内で、医薬品(KCL=編集部注・カリウム製剤)を無断で持ちだしている行為を発見され暴れ、取り押さえられる事件があった。
精神科診察により、妄想状態、精神障害と診断され、精神科病院へ家族が乗用車で搬送中に、家族の制止を振り切り飛び降り死亡するに至った。
これまで精神疾患の既往はなく、通常に勤務。この行為の4日前(金曜日)に新型コロナワクチン(ファイザー)接種を受けている〉
「やべえ、最悪、最高です」
男性は同病院に勤務する職員Aさん。大学時代の同級生はこう語る。
「真面目で優秀な人でした。私も彼も臨床工学技師。人工呼吸器、人工心肺などを管理する仕事で、今はコロナの重症患者の方に対して向き合っています」
病院でも堅実な仕事ぶりで知られていたという。Aさんに何が起きたのか。報告された内容をもとに辿っていく。
4月23日に勤務する病院内でワクチンの1回目を接種。25日の日曜日に友人といたところ、立ち眩み、手の震えがあり、アパートから実家に送ってもらった。翌26日は勤務日だったが、Aさんは朝37.1度の熱があると病院に連絡し、休息を指示された。
問題の症状が見られたのは4月27日のことだ。体温は36.2度の平熱。出勤したAさんに、上司が「大丈夫か?」と声をかけると、Aさんからはちゃんと返答があった。
〈いつもの淡々としている印象で、具合が悪そうではなかった〉
医療機関が厚労省に報告した「当日の経過詳細」には、出勤した時の様子がそう記述されている。