開会式まであと1か月に迫る東京五輪だが、中止を求める世論は日増しに高まるばかりだ。
そうした状況の中、すでに国内一般向けに販売された五輪チケットは445万枚とされ、最も高い開会式(A席)で30万円の価格だったが、それをはるかに上回る“プラチナチケット”が存在する。
「一昨年末にJTBからの案内で、1席66万円のチケットを2枚、代理店への手数料10%を合わせ計145万円で購入しました。男子陸上100mなど人気競技観戦のほか、専用ラウンジでの高級料理や酒の提供など“VIP待遇”に魅力を感じ購入しましたが、キャンセルを受け付けてもらえず困り果てています」
そう語るのは会社経営者(60代男性)のA氏だ。
A氏が購入したのは『オリンピック公式ホスピタリティパッケージ(以下「HP」)』という“高付加価値型観戦チケット”。五輪組織委員会が委託した代理店3社が独占販売を許されている。
窓口の事務局は「STHジャパン」という英国企業の日本法人が運営。同社はJTBも49%を出資する合弁企業だ。
「STHは2019年のラグビーW杯日本大会でも富裕層向けにVIP待遇の高額席を販売した実績があります」(旅行業界関係者)
このチケットの最高額は635万円。価格帯は「プレミアム」から「プラチナパビリオン」まで8区分され、最上級のプランは人気競技観戦のほか、新国立競技場に隣接する会場での〈国際的シェフによるグルメ〉の提供や〈特別ゲストの登場〉などの特典が謳われる。ところが──。
「感染拡大が続き不安になってキャンセルの問い合わせをしたが、受け付けてもらえなかった。案内にある食事や特典についても、いまだ詳細なアナウンスはない。大枚をはたいて購入したのにどうなるのか……」(A氏)
開催の可否、観客の有無が不透明ななか、一般販売を含め、チケットの扱いには注目が集まっている。アトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士はこう解説する。
「組織委が定める『東京2020チケット購入・利用規約』には『天災』『公衆衛生に関わる緊急事態』など不可抗力で履行ができなかった場合は責を負わないとの条項がある。専門家の間でも意見が分かれるが、中止や無観客開催の場合も返金されない可能性がある」
100万円以上の高額となれば大きな問題だが、販売側はどう答えるか。
「弊社は単に“販売仲介”という立場。手数料については仮に中止となっても手配の段階で発生しており、お返しできません」(JTB広報室)