東京五輪オフィシャルパートナーに名を連ねる新聞社は、朝日新聞のほか、読売新聞社、毎日新聞社、日経新聞社の計4社。中でも朝日は事業部門の社員1名が組織委に出向しているという。
新聞社以外にも五輪を“スポンサード”するメディアが存在する。公共放送局の「NHK」だ。元NHK職員で次世代メディア研究所代表の鈴木祐司氏が解説する。
「NHKは民間放送連盟と共同で平昌・東京の五輪2大会で約660億円もの放映権料を支払っている。そのうちNHKが7割を負担しており、組織委にとって最大の“お得意様”と言えます」
そのせいかNHKも大手紙同様、五輪の「開催中止」について不自然なほど言及していない。それが鮮明になったのが5月28日だ。
この日は菅首相が9都府県の緊急事態宣言を6月20日まで延長すると発表、20時から記者会見を行なった。『news zero』(日本テレビ系)や『報道ステーション』(テレビ朝日系)など民放の報道番組では、
「国民が納得できるよう、感染状況がどうなれば開催し、どうなれば開催しないか。具体的な基準を明示するべきではないでしょうか」
という質疑応答の様子を流すなか、NHKの『ニュースウオッチ9』は会見こそ取り上げたものの、五輪に関する質疑は放送されなかった。
「番組ではその後、お笑いコンビのEXIT・りんたろー。と新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の対談がありましたが、ここでも五輪開催については言及なし。
しかし、NHKの公式ホームページに対談の詳細な内容が記載されていたのを見て驚きました。そこでは五輪開催のリスクについてしっかり話しているのです。地上波ではカットしていたということです」(鈴木氏)
折しも会見前日の5月27日、NHKにとって「不都合な法案」が事実上“廃案”になっていた。
「受信料値下げを進める『放送法改正案』について、自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳両国対委員長が会談し、法案について『継続審議』とすることで合意した。10月に衆院議員は任期満了を迎えるため、今国会での成立を断念した形です」(同前)