「空き家」が社会問題となって久しい。野村総研が2020年6月9日に発表した「2040年の住宅市場と課題」によれば、2018年における総住宅数は6241万戸で、うち空き家は849万戸となっている。空き家率は13.6%となり、1978年の7.6%に比べると急激に増えてきている。
野村総研のシミュレーションによれば、空き家が除去される率が2008年から2012年度の水準だとした場合、2038年に空き家率は30.5%にまで上昇するという。戸数でいえば、2200万戸に増える予想だ。
理由としてすぐに思いつくのは「地方の過疎化によって人の住まない家が増えている」ということだろう。しかし、「それは違う」と語るのは、空き家状況を調べている「空き家活用株式会社」の和田貴充社長だ。
「空き家の数がいちばん多いのは東京都で、2018年でも約80万戸あります。全体の1割を占めているわけです。この割合は、今後も変わらないと思います」(和田氏)
人口が多く、住宅需要も多いはずの東京。にもかかわらず、空き家の数が全国でいちばんだというのだ。なぜ、これだけの数が空き家のままになってしまっているのだろうか。その理由を、和田氏は次のように説明する。
「テレビ的には“相続権が込み入って”とか、“兄弟仲が悪くて相続で揉めている”といったケースが取り上げやすいのでしょうが、実際には、そういう例は多くありません。空き家になっている大きな理由は、“相続したけれども、どう活用していいのかわからないから”です。どう活用しようか決められないままに、空き家になってしまっているのが実態です。片付けるのが面倒くさくて、放置したままになっている例も珍しくありません」
活用されないのは、「情報が伝達されていないから」だと和田氏は言う。空き家問題を解決するために「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、特措法)が2015年2月に施行されてはいるものの、なかなか効果はでていない。
特措法では、空き家かどうかについて1年間を通じて人の出入りがないことや、水道・電気・ガスの使用状況などから総合的に判断することになっている。手間のかかることなので確実な情報が入手しにくいし、そもそも不動産業界では情報を広く共有する慣習がない。これでは空き家があっても必要なところに情報が届かない。