1年以上に及ぶコロナ禍で飲食業界は翻弄され続け、閉店に追い込まれた店も多い。そうした中、不思議な現象が起きている。日本酒の輸出が絶好調なのだ。いったい何が起きているのか──。ジャーナリストの山田稔氏が探った。
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コロナ禍の1年、国内の日本酒販売はふるわない。2020年(1─12月)の課税数量は約41万8500kl(キロリットル)で、前年比約10%ダウンとなった。消費データは総務省の家計調査を見ると、2020年の酒類の消費(家飲みと外食)は年間トータルで8%のマイナス。日本酒も例外ではないだろう。
日本酒の中国輸出は10年前の16倍に
一方、輸出はというと、国内の不振が嘘のように好調だった。2020年の輸出総額は241億円で、前年比103.1%。輸出数量は前年比87.3%にとどまったから、「量より質」で前年よりも高額な日本酒が輸出されたということだ。
世界中がコロナ禍だったにもかかわらず、輸出総額は過去最高を更新した。しかも11年連続である。2010年は85億円だったから10年間で約3倍に膨れ上がったことになる。
輸出先は上位3国が全体の7割を占めている。
(1)香港/61億7800万円
(2)中国/57億9200万円
(3)米国/50億7000万円
注目は対中輸出の急激な伸び。10年前に比べると16倍に急拡大しているのだ。
2021年になってからも輸出は好調で、1─3月の合計は79億5300万円で、昨年同期の49億3800万円を30億円も上回っている。1.6倍の高水準だ。
1─3月の輸出先上位は、(1)中国21億2300万円(2)香港18億5900万円(3)米国15億5200万円──と顔ぶれは一緒だが、順位が変わり、ついに中国がトップに躍り出た。