ジョー・バイデン大統領が任命したメリック・ガーランド司法長官は8日、前任のウイリアム・バー司法長官によるドナルド・トランプ前大統領のレイプ裁判への司法介入を継承することを明らかにした。これはトランプ氏にとっては朗報だが、バイデン政権の弱腰が物議をかもすことは確実だ。
女性誌のコラムニスト、E・ジーン・キャロルさん(77)は、今から26年前にトランプ氏にレイプされた生々しい体験を2019年6月に月刊誌で暴露した。それに対しトランプ氏は記者会見で、「そんな女性とは会ったこともないし、そもそも私のタイプではない」と侮辱的な表現で全面否定したのである。怒ったキャロルさんは同年11月、トランプ氏を名誉棄損で訴えた。2020年1月には、レイプされた時に着ていた黒いドレスに付着していたトランプ氏のDNA鑑定結果まで公表した。
キャロルさんによれば、当時52歳だった彼女はニューヨークの一流デパートの試着室でトランプ氏に襲われ、壁に押し付けられてレイプされたという。しかし、ワシントン連邦地裁で審理が始まろうとした時、トランプ氏の忠臣だったバー司法長官から待ったがかかった。「国家公務員不法行為訴追免除法」(ウエストフォール法)をタテに審理をストップさせてしまったのだ。
これは1988年に制定された法律で、現職の国家公務員は民間人による訴追請求を免除されるというもの。今回、バイデン政権の「法の番人」であるガーランド司法長官は、このバー氏による司法介入を継承することを決断したというわけだ。ガーランド氏やブライアン・ボイントン司法次官代行らは、バー前長官の決定を継承することは「司法省の一貫性を守るために不可欠」としている。
むろん、キャロルさんも黙ってはいない。「司法省は女性の権利の行使を妨げた。私は頭にきている! 私は侮辱された!」とコメントを発して徹底抗戦の構えだ。キャロルさんは人生相談で一世を風靡した有名人で、かつてミスUSAにも選ばれたこともある。トランプ氏のセクハラを訴えた数多くの犠牲者のなかでも影響力はピカ一で、すかさず彼女のファンをはじめ、女性人権保護団体やセクハラ追放グループが一斉蜂起した。下院のジェリー・ナドラー司法委員長も、ガーランド司法長官に決定の撤回を求める書簡を突き付けた。