「心臓病」「血液の病気」「重い精神疾患」──15の基礎疾患のある人へのワクチン接種が始まっている。「健康な自分には関係ない」。そう思っている人でも、専門家たちは「優先接種の対象となる可能性は高い」と言う。全国民が知るべき「本当の対象者」を解説する。
「爆速で進めたい」。小池百合子東京都知事(68才)の発言に呼応するかのように、都内の大規模接種会場では新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、当日接種可能な病院の前には行列ができている。
全国的にもわれ先にとワクチンを求める人が殺到するなか、次なる注目の的は「新たな接種対象者」に向けた動きだ。
「これまでは65才以上の高齢者に限定されていましたが、自治体によっては、64才以下の『優先接種』に動き始めています。すでに東京・足立区は、小規模の村などをのぞくと全国で最も早く、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を持つ64才以下の人の『優先接種』を始めました。中野区でも6月15日から接種が始まります」(全国紙社会部記者)
一方で、基礎疾患のない人への接種はまだ先になるとみられ、自治体によっては、秋以降までずれ込む可能性もあるという。
そこで、この「優先接種」の対象者が注目されているのだ。
「厚労省指定の15項目のいずれかに当てはまる基礎疾患を持ち、入院か通院をしている人が優先接種の対象です。この項目には『慢性の呼吸器の病気』や『ステロイドなどの治療を受けている』などが入っています。対象者となれば、一般接種より1か月ほど早く接種できる自治体もあるようです」(前出・全国紙社会部記者)
一方で、基礎疾患の線引きが曖昧だと指摘する声もある。
例えば「慢性の呼吸器の病気」とあるが、咳がよく出る人が該当するかどうかを判断するのは難しい。「慢性の心臓病」や「慢性の腎臓病」なども同様で、幅広い解釈ができるという。
確かに15項目の中には特定の病名が少なく、「慢性の〇〇病」といった漠然とした表記が目立つ。
血液内科医の中村幸嗣さんは、「一見、自分には無関係だと思うかもしれませんが、当てはまる基礎疾患はかなり多い」と語る。
「40代以上の中高年であれば、少しの不整脈があれば『慢性の心臓病』とすることができ、ヘビースモーカーで咳が出るなら、COPD(慢性閉塞性肺疾患)という『慢性の呼吸器の病気』を疑えます。お酒が好きで、肝機能を示すγ-GTPの数値が悪ければアルコール性肝障害が疑われ、『慢性の肝臓病』として優先接種対象になり得るわけです」