古から人々を魅了してきた富士山はいま、噴火しやすい状態になっていると、火山学の権威で京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏は指摘する。さらに、政府が警戒する南海トラフ地震と連動する危険性もあるとされる。
もしも、南海トラフ巨大地震のすぐ後に富士山が噴火すれば、国民のパニックは避けられない。
「南海トラフ巨大地震の直後には、政府は富士山噴火に備えた対策本部を設置し、首相を長として指揮系統を立てます。これは新型コロナの専門家会議と同じで、地震が起こってから立ち上がる。火山学者は、そこで初めて有識者として招集されるのです」(鎌田氏)
被害を最小限に食い止めるために肝心なのが「ハザードマップ」である。富士山のハザードマップは、今年3月に17年ぶりに改定された。そこで判明したのは、近隣住民に限らず多くの国民に被害が及ぶ可能性が高いという現実だ。
17年ぶりに改定されたハザードマップでは、想定される溶岩の噴出量を従来の「約2倍」に修正した。
「溶岩量が増えると、熱が保たれて冷えにくいため、溶岩はより早く、より遠くまで流れます。例えば、従来の予測で10時間以内に溶岩が到達するとされていた山梨県富士吉田市や静岡県富士宮市には、最短2時間で到達すると見直されました。到達範囲も、従来は静岡と山梨までとされていたが、神奈川県相模原市や小田原市まで流れる可能性が示されました」(鎌田氏)
溶岩量が増え、溶岩が噴き出す起点となる地点(側火口)も、従来の44地点から252地点に改定された。
「富士山は山頂ではなく、側火口から噴火する可能性が高い。山梨側と静岡側のどちらが噴火するかで、被害は異なります。山梨と静岡の両側から噴火する可能性もあります」(同前)
製図/タナカデザイン
※週刊ポスト2021年6月18・25日号