ビジネス

行列するパチンコ店は「報われた」と喜び、飲食店から「助かった」の声も

パチンコ店も苦境に立たされていた(写真はイメージ)

パチンコ店も苦境に立たされていた(写真はイメージ)

 一年前、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言下で、日本中が静まりかえっていた。やり場の無い苛立ちをぶつけるように、人々は様々な業態をコロナ対策の敵と認定して攻撃した。しかし、2021年4月25日からの緊急事態宣言では、様子が違った。パチンコ店を含む床面積1000平方メートル超の集客施設を対象に休業要請、1000平方メートル以下は休業の協力依頼が行われたが、営業している店舗では行列ができる盛況ぶりで、それを囲む周囲の視線も大きく変化している。ライターの森鷹久氏が、2021年になって歓迎されるパチンコ行列と、それに伴う客や近隣の変化についてレポートする。

 * * *
「連日の行列に、満員です。一年前は本当に家族で首を括るしかないと覚悟をしていたくらいでしたから、今は天国ですね」

 憑き物が落ちたかのような晴れやかな表情で筆者の取材に応じてくれたのは、都内のパチンコ店マネージャー・鈴木亮二さん(仮名・40代)。ちょうど一年前の今頃、全国で新型コロナウイルスの感染者が相次ぎ、飲食店や娯楽施設が休業や時短営業に追い込まれる一方で、鈴木さんの店は通常通りに営業をしていた。感染対策をしっかり行い、密にならないよう空調機器も導入。ここでは「絶対にクラスター(集団感染)が起きない」という自信もあったが、世間からは「不要不急の最たるもの」である遊戯場が営業していることに、強い不満の声が寄せられた。

「電話や手紙で、市民を殺す気かというようなクレームがたくさんきました。お店の玄関に液体を撒かれたり、マスコミや新聞記者が取材に来たり、変なユーチューバーがやってきて『営業している』と騒いだりされたこともあったんです。生きた心地がしませんでした」(鈴木さん)

 しばらくして、店は時短営業に踏み切ったが、客足は当然減り、収益も悪化。家族からは「パチンコ店なんかで働くから」と心ない言葉もかけられた。しかし、感染拡大が続き、飲食店などが国や自治体の要請を無視した形で営業を行い始めると、形勢は一気に逆転。店の外に、かつての「行列」が戻ったのである。

「身を切るような思いで様々なイベントを行っていましたが、やっと報われたという気持ちになりましたね。お客さんからも『頑張ってくれ』なんて声をかけられまして」(鈴木さん)

 店を訪れていた客も「やっと後ろめたさがなくなった」と手放しで喜んでいる様子だが、喜んでいるのは鈴木さんたちのようなパチンコ店スタッフや客ばかりではない。

 東京都内のパチンコ店の近くで飲食店を営む原田妙子さん(仮名・60代)は一年前、空気を読まずに営業を続けるパチンコ店に強い嫌悪感を抱いていた一人だ。

「朝から長い行列ができて、いろんなところから来たお客さんでごった返している。マスクを外して店の外でタバコを吸う男の人もいたしね、そりゃ怖かったですし、腹も立ちました」(原田さん)

 だが、パチンコ屋から客足が遠のくと、当然原田さんの店を訪れる客も減った。客のうちの何割かは、パチンコ店の客だったからだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト