ほそおもてに凜とした着物姿。歯切れのいい語り口。“粋”という形容がぴったりくる池波志乃(66才)は、「いくつになっても変わらない女性」の筆頭だ。聞けば、食道楽の夫・中尾彬(78才)のために、いまでも毎日ごちそうを作り、一緒に晩酌も楽しんでいるという。なのにスリムな体形を維持しているのはどうしてか?
「でもね、元来は太りやすい体質なんですよ。若い頃は褒め言葉で『グラマラス』なんていわれたけれど、だらしなくしていたら、いますぐにも太ると思います」(池波・以下同)
役作りでやせたり太ったりを繰り返していたが、20年ほど前に一度、過酷なダイエットに挑戦したという。
「中年太りをする前にやせておこうと思ったんですね。徹底して油抜きや糖質抜きを行って20kgぐらい体重を落としました。見た目はかなり細くなりましたが、鉄欠乏性貧血で倒れてしまったんです。栄養不足で、肌も弾力がなくなって……。そのとき、健康的にやせないとダメだと、実感しました。中年以降の極端なダイエットは、骨粗しょう症やしわになるなど、必ず後で支障がくるんですよね」
当時は仕事を辞め、時間に余裕ができた時期でもあり、栄養士の資格試験の教材を購入し、独学で食の勉強を始めた。そのときに出合った『食品成分表』(女子栄養大学出版部)は、改訂のたびに買い替え、いまも必携している。
「資格を取るつもりはまったくなくて、食材の栄養価を覚えたかったんです。それで、『食品成分表』を見ているうちに、いろいろな食品の、より細かい知識が身についてきたの。そこから、1〜3日単位で栄養バランスの取れた食事のローテーションをざっくりと作って書き出すようになったんです。細かいカロリー計算なんてしませんよ、嫌になっちゃうから」
作る予定の料理を書き留めることは、ダイエットのためにもおすすめだと言う。
「塩やしょうゆが多いとか、彩りが悪いとかがわかるんですよ。たとえば『この野菜は炒めようと思ったけれど、揚げ物があるから、おひたしに変更しよう』とか、バランスを調整できるでしょ?」
この献立メモを作るようになったのが、池波お手製の「お品書き」の始まりだ。
「あれは、私がバランスの取れた食事をしたいがための策略でもあったんです(笑い)。幸い中尾さんは、少しずつ品数が多いのが好きなタイプだから、こちらにも都合がいいの。中尾さんが決めていると思わせて誘導できるしね(笑い)。あちらも喜んでいるから、家庭円満で一石二鳥ですよ。
お品書きといっても、いつもはいらない紙を小さく切ったものに書いているだけ。終わったら捨てちゃいます。たまに、遊び心で(前ページのような)和紙などに書き付けているんです」