芸能

小林幸子が振り返る古賀政男の言葉「しゃがんだ後、人は立ち上がる」

師匠・古賀政男の金言とは?(時事通信フォト)

小林幸子の師匠・古賀政男の金言とは?(時事通信フォト)

 日本を代表する演歌歌手のひとり、小林幸子。そんな彼女も1979年に『おもいで酒』がヒットするまで、歌手としての人生は必ずしも順調とはいえなかった。苦労した時代を支えたのは師匠・古賀政男の言葉である。小林が明かした。

 * * *
 9歳の時に、古賀政男先生が審査委員長をしている『歌まね読本』(TBS)というのど自慢番組に父親が勝手に応募して、グランドチャンピオンになりました。

 収録後に先生から「この子を僕のもとで歌手としてデビューさせてみる気はありませんか」と言われ、子供の頃に歌手を夢見ていた父親は天にも昇る気持ちだったんでしょうね。「はっ、はい!」と即答し、母親の反対にも耳を貸さず、私はひとり上京して古賀先生の事務所にお世話になることになりました。

 先生は優しいおじいちゃまのような存在で、私のことを「チビ、チビ」と呼んで可愛がってくださいました。でもひとたび外に出るとその存在の大きさがわかります。

「チビがデビューするから着物やドレスが欲しい」と言って日本橋の行きつけのデパートに入ると、支配人をはじめお店の方がずらっと並んで迎えていました。その時に頂いた着物は今も大切にしています。

 忘れられないのは、初めてのレッスンの後にいただいた言葉ですね。

「チビ、歌では人はお腹いっぱいにならない。でも人の心を温かくすることはできる。そういう歌手に、いつかなりなさい」

 目の前で飢えて苦しむ人を見てきたという先生のお話を聞き、お金も食べる物も大事だけど、苦しい時に励ましになることができれば、歌い手の存在が価値あるものになるのだと得心しました。

〈小林は10歳の時に古賀作曲の『ウソツキ鴎』でデビューし、大ヒット。しかしその後はバラエティ番組やドラマなどで活躍するも、本業ではなかなかヒット曲に恵まれなかった〉

 デビューから数年後、先生とこんなやり取りをしました。先生に「人は悲しくなると、どうなる」と尋ねられ、私が「泣いちゃいます」と答える。さらに先生に「涙が涸れたらどうなる」と聞かれ、私が「わかりません」と言うと、先生はこうおっしゃいました。

「そこにしゃがむんだよ。そしてしゃがんだ後、人は立ち上がるんだよ」

関連キーワード

関連記事

トピックス

“令和の小泉劇場”が始まった
小泉進次郎農相、父・純一郎氏の郵政民営化を彷彿とさせる手腕 農水族や農協という抵抗勢力と対立しながら国民にアピール、石破内閣のコメ無策を批判していた野党を蚊帳の外に
週刊ポスト
緻密な計画で爆弾を郵送、
《結婚から5日後の惨劇》元校長が“結婚祝い”に爆弾を郵送し新郎が死亡 仰天の動機は「校長の座を奪われたことへの恨み」 インドで起きた凶悪事件で判決
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
「最後のインタビュー」に応じた西内まりや(時事通信)
【独占インタビュー】西内まりや(31)が語った“電撃引退の理由”と“事務所退所の真相”「この仕事をしてきてよかったと、最後に思えました」
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬・宮城野親方
【元横綱・白鵬が退職後に目指す世界戦略】「ドラフト会議がない新弟子スカウト」で築いたパイプを活かす構想か 大の里、伯桜鵬、尊富士も出場経験ある「白鵬杯」の行方は
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン