6月に突入し、これからジメジメと不快な季節が続くこととなる。広島工業大学環境学部建築デザイン学科准教授の宋城基さんが言う。
「人間が快適だと感じる湿度は40~60%。湿度が低すぎると汗が蒸発しやすくなって体感温度が下がり、湿度が高すぎると汗が蒸発しにくいので体感温度が上がり、不快に感じます。湿度が低すぎると粘膜が乾燥するため、風邪やインフルエンザにかかりやすくなったり、肌荒れを起こしやすくなる一方、湿度が高いとカビやダニの活動が活発になります」
湿度が60%よりも高くなるとアトピーやアレルギー疾患の原因となるカビやダニが繁殖しやすくなる。湿気がこもりやすいこの時期は、湿度を60%以下に保つことが健康に生活する必須条件となる。そのために大切なのが換気だ。宋さんが続ける。
「換気により室内にまんべんなく空気の流れが形成されると、空気の停滞がなくなり、室内が高湿度になりにくくなるため、カビが生えにくくなります。昔の木造建築はすき間が多く、空気の入り口である『給気口』や出口となる『排気口』をわざわざつくらなくても、自然と空気が入れ替わる仕組みになっていました」
しかし最近の建物では、そうはいかない。日本大学理工学部助教で一級建築士の井口雅登さんが解説する。
「最近の建物は、外からの熱や冷気を遮断する断熱性と、すき間風を防ぐ気密性の高さが重要視されています。そのため、意図的に空気を入れ替えなければ、空気が停滞してしまいます。日本の住宅は、2003年の改正建築基準法により、1時間に室内全体の空気の半分以上が入れ替わる仕組みであることが義務づけられています」
2003年7月以降にできた建物は、窓を開けなくても機械によって室内の換気ができる「24時間換気システム」が備わっている。
「本来、快適な湿度を保つためには、多少の調湿が必要な場合はあっても、24時間換気システムである程度の対応が可能です。オフィスビルなどは窓を開けなくても、空調設備で換気ができるようになっています」(宋さん・以下同)
24時間換気システムがあるのにカビが生えるとしたら、正しく利用できていない可能性が高いのだ。