日本の象徴とも言える富士山はいま、新たな大噴火の危機を迎えている──。「富士山は300年ぶりの大噴火に向けた“スタンバイ状態”に入っています」。そう語るのは、火山学の権威で京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏だ。2011年の東日本大震災をきっかけに、富士山地下のマグマに影響が及んだという。
今年3月には、富士山噴火のハザードマップが改定。想定される溶岩の噴出量は約2倍に修正されるなど、大きな被害が予想される。
大噴火の危機が迫っているのは、富士山だけではない。日本列島には111の活火山があり、狭い国土に全地球上の7%にあたる活火山が集中する“火山大国”なのだ。別掲の図では、その中から特に警戒が必要な20の活火山を挙げた(鎌田浩毅氏の著書『富士山噴火と南海トラフ』より作成)。
鎌田氏が最も注意を促すのは、今年4月にも爆発的な噴火が発生した鹿児島・桜島だ。この噴火では高温の火山弾が夜中に多数噴出し、まるで火砕流が流れたような情景となった。火砕流とは、高温のマグマや有毒な火山ガスが混ざり合って、時速100km以上の猛スピードで襲う現象のこと。今年で発生から30年を迎える長崎・雲仙普賢岳の火砕流(1991年)で、火山学者や地元の消防団員など44人が犠牲となったことでも知られる。
「桜島では、1914年に大正噴火と呼ばれる大規模噴火が発生し、火砕流や溶岩流、地震により多数の死者が出ました。100年以上、マグマが溜まり続けているので要注意です」
鎌田氏は他にも、2016年の熊本地震直後に噴火した阿蘇山、1986年に島民1万人が避難する大噴火を観測した伊豆大島にも警戒を呼びかけた。地震・噴火の危険と隣り合わせの“災害列島”に住む以上、常に防災意識を怠ってはならない。
製図/タナカデザイン
※週刊ポスト2021年6月18・25日号