「5Gの電波が新型コロナウイルスを拡散している」「コロナワクチンを接種すると、5Gの電波に操られてしまう」「ドナルド・トランプが日本人ひとりにつき6億円配布する」……SNS上では、まるでSFや夢物語のような意見を大真面目に語り合うコミュニティが無数に存在する。彼らの現実離れした主張は「陰謀論」と呼ばれ、時に揶揄の対象にもされているが、本人たちは「真実を語っているせいで攻撃されるのだ」とさらに陰謀論にのめり込んでいくようだ。
もともとインターネットとは怪しげな言説がつきものの場であるが、新型コロナウイルス感染拡大、昨年のアメリカ大統領選挙を通して、その勢いはさらに増してしまった。トランプ前政権の内部情報を持つという「Q」なる人物が、事実無根の情報をSNSなどで拡散し始めたことで世界的な話題となった集団「Qアノン」は特に有名だ。彼らがインターネット上で展開した主張こそ「陰謀論」だった。
コロナ禍でいっそう先の見えない時代だからこそ、荒唐無稽な主張に囚われてしまう人も現れるのだろう。また、新技術への漠然とした不安によるものだろうか。陰謀論において「5G」がひとつのキーワードと化しており、昨年春、イギリスでは、5Gとコロナの関連性を信じる人々によって、通信設備が放火などの標的にされた。事態を重く受け止め、YouTubeは陰謀論に関する動画に厳しく対応していく方針を示した。Google、Facebook、TwitterなどもQアノン対策に乗り出すなど、各プラットフォームにとって陰謀論に基づくデマ・誤情報の拡散は悩みのタネなのだ。
そんな中、SNS上で「身近な人間が陰謀論にハマってしまった」という悲鳴が上がっている。「友達に『コロナは政府が仕掛けた茶番』とお説教をくらわされた」「夫が『コロナワクチンは危険だ』という思想に染まったせいで、自分は接種できないかもしれない」「『ワクチンを打ったら身体に磁石がくっつくようになる』という動画を母親から見せられた」といった体験談は多く、「そのせいで相手と距離を置いた」「絶縁した」という声もある。
もしかすると、「陰謀論のせいで疎遠になった相手がいる」というのは、もはや珍しくない出来事なのかもしれない。しかし、親しい友人や家族が相手となると、なかなか距離を置くのも難しい。身近な人が陰謀論にのめり込んだら、どう接するべきなのか。