和歌山市で発生した毒物カレー事件で死刑判決が確定した林眞須美死刑囚(59才)の長女・久美さん(仮名)が6月9日に亡くなった。その最期は、関西国際空港へと繋がる連絡橋から、娘を連れて飛び降りるという衝撃的なものだった。
6月9日、27℃。快晴。空と海の境目がわからないほど、雲がない。1台の真っ赤な外車が、境目を示すようにそのボディーを輝かせ、全長約4kmの海上橋を悠然と走る。そんな画になる光景に異変が起こったのは、車が海上橋のちょうど真ん中あたりに着いたとき。16時前のことだった。
「大阪府泉佐野市と沖合にある関西国際空港を結ぶこの橋は高速道路なのに、赤い車は路肩に停車したのです。その車から30代の女性と女の子が降り、そのまま橋の上から約40m下の海面へと飛び降りました」(大阪府警関係者)
目撃者がすぐさま110番通報。大阪府警は約40分後、橋から南に約1km離れた海上で、37才の女性と4才の女児がうつ伏せで浮いているのを発見した。母と娘だった。2人は病院に搬送されたが、死亡が確認された。不可解な母娘による無理心中。この真相を知るには、約2時間前に時計の針を戻す必要がある。
あんな赤い外車に乗ってる人は、こんな田舎町ではあの人しかいない
37才の女性は14時18分、和歌山県和歌山市の自宅アパートから、取り乱した声で119番通報をしていた。
「娘の意識がない! 呼吸がない! 家に帰ったら娘が倒れていて血のような黒いものを吐いています!」
和歌山市消防局の話。
「すぐに現場に到着しましたが、そのときも母親はかなり動揺している様子でした。ほかに4才の女の子と40代の男性がいて、すでに16才の女の子は心肺停止状態。腹部を中心に、アザがあったと救急隊から聞いています」
自宅で亡くなっていたのは鶴崎心桜(こころ)さん(享年16)。アザや外傷は古い傷と新しい傷の両方が確認され、日常的に虐待を受けていた疑いが持たれている。検視の結果、死因は外傷性ショックだった。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広氏が推察する。
「通報で“血のような黒いもの”と話していることから、腹部への暴行で胃が破裂し出血して、血液に含まれる鉄分が胃酸と混じって酸化したと思われます。肝臓などの内臓も破裂し、体の内側の腹腔で出血している場合は、出血多量の末の外傷性ショックとなります。それほどの強い衝撃が外から加わったのでしょう」