アメリカの製薬会社バイオジェンと日本のエーザイが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」が米国で承認された。病気の進行に直接介入する根本治療薬としては初めての承認となり、世界的なニュースとなっている。
夢の新薬はいつ、どのように日本にやってくるのか。開発元のエーザイと、治験に参加した認知症専門医の眞鍋雄太医師が多くの疑問に答える。(Q&A前編)
【Q】いつから日本で使えるようになるのか
エーザイはこの点についてはノーコメントだが、眞鍋医師はこう見通しを語る。
「すでにアデュカヌマブは国際共同治験を終えて、2020年12月に厚生労働省に販売の申請をしています。米国での承認を受けて日本でも、早ければこの9月にも承認される見通しです」
米国では承認時に追加の臨床試験が課せられた。日本でもこの追加臨床試験の結果次第で「取り消しもある」との条件付き承認となりそうだ。
【Q】どのような人が投与対象となるのか
まず注意したいのが、アデュカヌマブは、認知症のうち6~7割を占めるとされるアルツハイマー病に特化した治療薬であることだ。
「脳血管性やレビー小体型、前頭側頭葉変性症など、アルツハイマー病以外の認知症にアデュカヌマブは使えません。使用の際はMRIなどを行ない、脳梗塞などアルツハイマー病以外の障害がないかを調べるはずです。
アルツハイマー病は、脳内に蓄積したアミロイドβが原因と考えられます。このためアデュカヌマブの使用に際しては、脳にアミロイドβがどの程度溜まっているかを調べる『アミロイドPET』という検査も行ないます」(眞鍋医師)
認知症の「進行度」もポイントとなる。
「アデュカヌマブが効果を持つのは、認知機能が低下した初期の段階です。このため使用対象となるのは、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)や認知症の初期の患者に限られます」(眞鍋医師)
【Q】MCI(軽度認知障害)はどのように診断されるのか
アデュカヌマブの効果を最大限に発揮するには、MCIの段階で使用することが肝要だが、どのように診断するのか。
「MCIの診断には、『長谷川式簡易知能評価スケール』や『ミニメンタルステート検査(MMSE)』といった認知機能検査に加え、『MoCA-J』というスクリーニング検査を用います。さらにMRIとアミロイドPETで脳の状態を確認して、MCIであるかどうかを総合的に診断します」(眞鍋医師)
【Q】治療はどのように行なわれるのか
アデュカヌマブを用いた治療は点滴で行なわれる。
「米国での治験の際は、体重1kgに対して10mgを点滴投薬しました。体重60kgなら薬の量は、600mgになります」(エーザイ広報担当者)