アメリカの製薬会社バイオジェンと日本のエーザイが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」が米国で承認された。病気の進行に直接介入する根本治療薬としては初めての承認となり、世界的なニュースとなっている。
夢の新薬は、どのような効果が期待できるのか。開発元のエーザイと、治験に参加した認知症専門医の眞鍋雄太医師が多くの疑問に答える。(Q&A後編)
【Q】どれだけ効果が期待できるか
アデュカヌマブは脳内に蓄積したアミロイドβを減らし、認知機能の低下を穏やかにする効果が期待できる。眞鍋医師は4人の70代男性に治験を行なった。
「MCI(軽度認知障害)が2人、認知症の初期が2人でした。物忘れと日常的な気力の低下があったMCIの2人にはアデュカヌマブがよく効き、ひとりは投薬によって中断していた趣味の旅行に行くまで回復し、もうひとりも認知機能が改善しました。認知症の初期はひとりが投薬で症状の進行が止まり、症状が進んでいたもうひとりには効果がなかった。この結果からもアデュカヌマブの投薬開始は早ければ早いほど効果が期待できます」(眞鍋医師)
【Q】治療費はいくらかかるのか
夢の新薬の普及のネックになりそうなのが高額な治療費だ。
エーザイの米国向けリリースによれば、4週間に1度の投与で1回あたり4312ドル(約47万円)、年間で5万6000ドル(約613万円)がかかる。
「ただしこの価格は言わば卸値で、市場価格はまた別です。実際にいくらになるかは現時点で何とも言えません」(エーザイ広報担当者)
【Q】保険は適用されるのか
市場価格がいくらになるか未定とはいえ、高価な薬だけに待たれるのが保険適用だ。眞鍋医師は「保険適用されるはず」と予想する。
「ただし、すべて保険で賄ったら国庫負担が増してしまうため、診断基準を厳格にして、保険適用の症例を絞ると考えられます。処方できる医師も日本認知症学会専門医だけにするなど、限られた枠組みになるはずです。
同時にアデュカヌマブ使用時に必須となるアミロイドPETも保険適用となる流れです。アデュカヌマブの承認とともに、日本のアルツハイマー病の診療は大きく変化するでしょう」(眞鍋医師)