新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する一方で、“身近に感染した人がいない”という声も少なくない。しかし、それもたまたま運が良かっただけなのかもしれない……。体当たり企画などを得意とする『女性セブン』の“オバ記者”こと野原広子が、身近にいたコロナ陽性者のエピソードを紹介する。
* * *
「知り合いにコロナ患者いる?」
「いない。会社の取引先で出たとか、友達の友達が感染したって聞くけど、身近な人にはいない」
この春、女友達3人でランチしたときに、こんな話が出た。幸いと言っていいのかどうか、顔が浮かぶ人の感染はゼロ。コロナは少し離れたところでの騒ぎで、まだ目に見えるところまでは波が押しよせていない、と思っていたの。
それがとうとう、「実は感染しました」という人が現れた。57才の男性、Hさんだ。明朗快活という言葉がピッタリの広告業界の人で、彼と会うとついつい話が弾み、「えっ、もうそんな時間?」と驚いて席を立つことになる。
そのHさんが先日、いつになく口ごもり気味で、「実はコロナにかかったんですよ」と言うからビックリしたなんてもんじゃない。
「それ、いつ?」
それまで堅苦しくない程度の敬語で話していたけど、コロナと聞いたとたん、ちょっと責めるような口ぶりだったかもしれない。
「いえいえ、大丈夫ですよ。私が感染したのは、今年のお正月で、私たちが会ったのは2月末。その間、一度もお会いしていないですから」
確かにその通りで、ホッとしたと同時に好奇心がむくむくと頭をもたげ、取材開始。洗いざらい聞いたのが次の通りだ。
「最初におかしいなと思ったのは、1月2日の夜ですね。風邪をひく前兆ってあるじゃないですか。熱とか、だるさはまだないけど、全身がいつもと違っていて、やばいな~って感じ。
ひとり暮らしなので、体調に異変があるとすぐに病院に行くんです。このときも、コロナのこともあるから、早い方がいいと思って開いている内科をネットで調べて、翌朝、病院に行きました。万が一のことを考えて、自転車を使いました。体温は平熱だし、体調は前日と変わらないけど、唾液で検査をしたら、なんと陽性。さっそく医師は入院先を探してくれたけど、お正月でどこも受け入れ先はありませんでした」