二代歌川広重『名所江戸百景 赤坂桐畑雨中夕けい』1859年(写真/国立国会図書館)
梅雨の雨降りで外出もままならないときは、浮世絵に描かれた名所をゆく、歴史探訪東京さんぽを楽しもう。
それまで知られていなかった江戸の名所を新たに掘り起こしたことで人気の歌川広重の『名所江戸百景』だが、連作の途中で広重が病死したため、版元の要望で二代広重が引き継いで描いた。しかし、売れ行きがあまりよくなかったのか、二代広重が描いたのは『名所江戸百景 赤坂桐畑雨中夕けい』1859(安政6)年一枚だけという。
「しとしとと降る優しい春の雨です。下の方には武士らしき2人が傘を差しているのに対し、お付きの者は雨に濡れるに任せています。その後ろには棒手振りの町人が描かれていますが、大名屋敷の連なる地域でも、商人も歩くことの許された通りだったということがわかります」(岡田美術館・小林忠館長)
現在の赤坂見附から溜池山王方面が描かれているこの浮世絵では、右上に向かって人々が歩く姿が描かれている。その先には、赤坂御門があったと考えられる。江戸城を守護した城門のひとつである赤坂見附跡には、石垣のみではあるが、往時の江戸城外濠の姿を今に残している。
※週刊ポスト2021年7月2日号
赤坂見附から溜池山王方面を望む。浮世絵では右上に向かって人々が歩く姿が奥に描かれているが、この先には赤坂御門があったと考えられる(撮影/内海裕之)