混乱のなかで開幕を迎えようとする東京五輪。知名度の高いプロ選手たちの言動ばかり注目が集まるが、そもそもオリンピックとは、そうした有名アスリートのためのものなのだろうか。アマチュアであることに誇りを持ち、アスリートとは「別の顔」を持ちながら五輪に挑もうとした選手たちには、並々ならぬ困難も、待ち受けていた。
五輪の開幕まで1か月あまり。各競技の代表選考も大詰めを迎えるなか、新型コロナに翻弄された東京五輪を象徴するような事態が、ビーチバレー界で起きた。
開催国枠の代表決定戦に出場予定だった西村晃一(47)・柴田大助組が、柴田のコロナ陽性により棄権となり五輪への道が閉ざされたのだ。
「延期になった時は、あのトレーニングをもう1年やるのかと、心と体がきつかった。しかしパートナーがまだ若い(26歳)ので、伸びしろがあるとプラスに考えてやってきた。調整してピークに持ってきた実感はあったのに……」
プロビーチバレーチームの運営会社の代表も務め、選手でありながら競技の普及にも尽力する立場の西村は、東京オリンピックにかける想いは一入だった。チームとしては、感染対策を徹底してきたが、どうしてコロナに感染してしまうのか。西村が無念でならない。
「誰を責めても何を責めても仕方ないですよ」(西村)