香港では民主化運動に関係した多くの活動家らが香港国家維持法(国安法)違反などの罪で起訴されているが、香港特別行政区政府は昨年7月1日の国安法成立から昨年末までの半年間で、交流サイト(SNS)大手のフェイスブック(以下、FB)とツイッターに対して、民主化活動家らのユーザーデータなど233件の情報開示を求めていたことが分かった。これに対して、FBとツイッターはすべての要求を拒否したという。
これ以前の2020年上半期の半年間では、香港政府による両社への開示要求は63件だったが、国安法施行後はほぼ4倍に増加。香港政府が活動家の情報を得るために、FBなどのチェック体制を強化している実態が明らかになった。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
香港では昨年6月末の国安法施行後、民主化活動家ら107人が逮捕され、57人が起訴されているが、香港政府は彼らの活動状況を知るため、FBなどで情報を収集し、行動計画などを割り出して運動を妨害、逮捕容疑に加えていたとみられる。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は、香港政府幹部や中国共産党政権の香港問題担当者から得た情報として、民主化活動家からのデモや集会、あるいは打ち合わせなどの情報は、彼らのツイッターやFBのアカウントを割り出したうえで、「民主化活動に関心がある」として偽名を使って「友だち」になり、内部の情報を得ていたと報じている。
香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官も香港の大学生らが「下心を持つ外部勢力」によって利用されているとして、「彼らはデモに参加することで外部勢力から350香港ドル(約5000円)をもらっている。彼らは中国政府を弱体化させたいか、中国に対してイデオロギー的偏見を持っているのだ」などと非公式に発言したことがある。林鄭氏は、その情報の出所について明確に語らなかったが、香港メディアはツイッターやFBなどのSNSが情報源としている。
一方、FBなどを使った情報操作については、中国共産党政権も積極的に関与しているようだ。
ツイッターとFBは2019年末の時点で、香港の民主化グループと敵対する勢力が偽名でアカウントを用いて民主化グループを分断しようとしているとして、これまでに約1万5000件ものアカウントを閉鎖したと発表している。