ライフ

ワクチン接種で一安心のはずが はからずも生まれつつある「新しい分断」

ワクチン接種は「安心できる理由」になると思っていた(イメージ、時事通信フォト)

ワクチン接種は「安心できる理由」になると思っていた(イメージ、時事通信フォト)

 これでようやく一息つける。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が具体的になったとき、これまで辛抱していた生活から抜け出せると希望を見た人も多いだろう。だが実際には、ワクチン接種をしたことでコロナへの恐れが増した人もいるようだ。ライターの森鷹久氏が、ワクチン接種によって生まれた新たな分断に直面させられている人たちの戸惑いをレポートする。

 * * *
「ほぼ2年会えていませんでしたので、今年の夏こそは、と子供たちも楽しみにしていたんです。両親はネットニュースなどでも取り上げられるような陰謀論に影響されている高齢者、というわけではないと思っていたので、ショックといえばショックでした」

 神奈川県在住の会社員・末次純さん(仮名・40代)は、間も無くやってくる夏休みに、妻と子供二人を連れて九州の実家へ帰省を考えていた。新型コロナウイルスの新規感染者は減少傾向にあり、ワクチン接種も順調に進んでいる。念の為、帰省直前にPCR検査を受ける手筈も整え、首を長くして待つ「じいじとばあば」に会いに行こう、と子供達も喜んでいた。しかし……。

「両親は65歳以上で、自治体による1回目の接種を受けました。受ける前までは、私たちの感染リスクが減る、と喜んでいたんですが、接種後の様子がどうもおかしい。何かあったのかと聞いてみると、ワクチン接種がまだの私や子供たちが来るのはちょっと怖いと言い出して。いや、気持ちはわかります。でも、接種前は『なんとか孫に会いたい』と言っていたので、なんか残念というか、表現できないモヤモヤが残ってしまった」(末次さん)

 確かに、ワクチン接種したからといって100%、コロナに感染しなくなるわけではない。だが感染しにくくなり、万が一、感染しても重症化しにくくなるのだから、今までよりも人と会いやすくなるはずと周囲も期待していたのだ。ところが、ワクチンを接種したことで、接種していない人たちの高リスクが、接種済みの自分たちに悪影響を及ぼすのではと怖くなってしまったということなのだ。

 コロナ禍における世界では、さまざまな場面で考え方の相違に端を発する「分断」らしき対立構造が明るみに出ている。若者は感染しても無症状で高齢者にうつす危険性が高い、だから若者は外に出るな、なんていう極端な論調などはその代表例だろうが、ワクチンを打った打たないでも、やはり「分断」とでも呼ぶべき何かが発生しているようなのである。

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト