普段から華やかな舞台で活躍し、スポンサー料や賞金、ファイトマネーなどで収入を得ているプロアスリートは多いが、違った環境で苦労を乗り越え五輪の切符を勝ち取った選手たちがいる。
本職を持ちながらアスリートとして五輪を目指す“二足のわらじ”を履くのは、マイナーに位置づけられる競技のアマチュア選手に多い。男子ボクシングの田中亮明(27)は、母校の中京高校(岐阜)の教員として、ボクシング部を指導しながら五輪出場を目指してきた。
「2018年まで教壇に立っていましたが、2019年から通信制課程に異動し、デスクワークが中心となった。無駄な時間を作らず、練習は効率的にやっています。母校のリングで生徒とマススパーをすることもあるし、弟(プロボクサー・田中恒成)のジムで練習することもある」
高校時代のライバルは、WBA&IBFバンタム級統一王者の井上尚弥(28)。プロで活躍する弟や井上を横目に、田中は五輪でもっとも輝くメダルを目指す。自転車マウンテンバイク(MTB)の今井美穂(34)は、群馬県の公立小学校で教員を務める。海外の大会などには職場の支えを受けながら参加する公務員ライダーだ。
「始業式の3日後には合宿に参加し、その後は5月に1週間授業を行なっただけ。それでも生徒たちがたくさん手紙をくれて応援してくれています。日本人初となる完走を達成し、生徒たちには五輪に出て感じたこと、海外選手の様子を伝えたい」
同じ自転車競技でも、トラック代表の梶原悠未(24)は現役の大学院生である。
「コロナで課題が増え、自宅で勉強しなくてはならず、練習との両立がより過酷になりました。昨年末までは1日10時間勉強して、2時間トレーニング。今年に入ってからは2~3時間勉強して、5時間程トレーニングしています」