7月23日に開会式を迎える東京五輪では、観客上限が1万人に決まったことで、観戦チケットの「再抽選」が行なわれることになった。五輪組織委員会は、現在販売済みの363万枚に対し、91万枚を再抽選で無効にすると発表。結果は7月6日に公式チケット販売サイトで発表されるという。
だが、この再抽選の“対象外”とされた観戦チケットがある。スポンサー枠のチケットだ。
全71社から史上最高額となる3720億円の協賛金を集めた東京五輪では、スポンサー各社が自社商品購入者に抽選で観戦チケットのプレゼントキャンペーンを実施してきた。
例えばパナソニックは2020名に観戦チケットを、アサヒビールは200組400名にペアチケットを配るなどしており、スポンサーや競技団体向けのチケットは合計50万枚に上ると報じられている。
五輪について取材を続けてきた元博報堂社員のノンフィクション作家・本間龍氏が語る。
「スポンサー各社は出資金額に応じて数百枚から数千枚単位でチケットを割り当てられています。これは自社商品購入者への抽選キャンペーンだけでなく、得意先への接待分のチケットも含まれている。各社からすると、抽選キャンペーンを打つのにも莫大な費用がかかっているので、このチケットを無効にされるのはなんとしても避けたい。企業側が有観客にこだわるのは当然で、スポンサー枠のチケットの処遇が観客動員へと舵を切らせたひとつの要因だったと見る向きもある」
組織委側もスポンサーのチケット問題には神経をとがらせていたようだ。あるスポンサーの五輪担当者が語る。
「まだ有観客か無観客かで揺れている4月に、チケット抽選キャンペーンの当選者はどうなるのか組織委に問い合わせた。もし無観客になったら当選者への連絡業務が発生するし、早めに対応を決めておきたかった。
すると、組織委は『チケットの当選は有効です』と回答した。各社とも同じような問い合わせをしていたようですから、組織委はこの時点で『スポンサー枠は守る』と決めていたのでしょう」