27年ぶりの月ぎめ購読料値上げを発表した朝日新聞。7月1日から朝刊と夕刊のセットは現在の月額4037円から4400円となる。同じタイミングでデジタル版の“隠れ値上げ”が行なわれていたことはあまり知られていない。
朝日新聞の記事をウェブ上で読める「朝日新聞デジタル」にはこれまで、月額980円で月に300本の有料記事を読める「シンプルコース」と、紙面と同じレイアウトで有料記事を無制限に読める月額3800円の「プレミアムコース」があった。
その「シンプルコース」のサービス内容が9月8日から変わる。値段は月額980円と変わらないが、閲覧できる記事が300本から50本と、6分の1に減る。それに合わせて、スマホのアプリ版では気に入った連載記事の続きをすぐに読める機能などが増えるという説明だ。加えて記事本数が無制限の「スタンダードコース」(月額1980円)が新設されるという。
怒りを露わにするのが神奈川在住の70代男性だ。
「読み終わった新聞を捨てに行くのが億劫になったので、最近デジタル版で一番安い980円のプランに加入して、パソコンで読んでいた。でも9月から50本しか読めないなんて、実質6倍の値上げじゃないですか。スマホアプリを充実させると言っても、スマホを持っていないから意味がないし、コースを変えたら1000円も余計にかかる」
メディア文化評論家の碓井広義氏はこう話す。
「どの新聞社も紙の購読者が減少し、デジタル版の購読者を拡大しようとしているなかで、アプリの機能を充実させたのは、新聞を紙で読んでこなかった若者へのアプローチだと思います。しかし、今まで安いと思ってプランに入っていた読者にとっては事実上の値上げになってしまった。若者にとっても、月額500円ほどにしなければ財布を開かないのでは」
朝日新聞社に聞くと、「デジタル版のサービス内容変更につきましてはHPでお知らせした通りです」(広報部)と回答。
今年の3月期連結決算では売上高が前年比16.9%減で、純損益は441億円の大赤字となった朝日新聞。この改革は起死回生の一手となるか、はたまた傷口を広げるか。
※週刊ポスト2021年7月9日号