2018年、千葉大学の研究チームが約1万4000人の高齢者を対象に「浴槽につかって入浴する頻度」と「その後の新規要介護認定」との関係を調べ、発表した。その結果、週に7回以上入浴する高齢者は、週に0~2回しか入浴しない人と比較して、夏と冬のいずれでも、約3割も要介護認定のリスクが減少したというのだ。
つまり、冷房で体が冷えやすい夏も、シャワーのみで済ませず、しっかり湯船につかって温まった方がいいということになる。
しかし、高温になる夏の浴室は、熱中症のリスクがぐっと高まる。
『おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術』(山と溪谷社)の著書がある、東京都市大学教授で温泉療法専門医の早坂信哉さんが指摘する。
「一般的に熱中症とは、体温が40℃を超えた状態を指し、熱中症になると意識障害を起こす危険が増します。42℃のお湯に25分程度入ると体温は40℃に達します。意識障害を起こしたまま湯船につかり続け、体温が42.5℃を超えると心肺停止を起こすこともある。夏の長風呂は非常に危険です」
湯船につからずとも、シャワーだけでもリスクがある。
「そもそも夏は浴室の温度が高くなりやすいため、シャワーの湯気が立ちこめれば、同じように熱中症のリスクが上がります」(早坂さん・以下同)
さらに、入浴の時間帯にも注意が必要だ。
朝風呂は脱水状態になりやすく、脳卒中や心筋梗塞などの命にかかわる重篤な病気を起こしやすい。
「冬よりも寝汗をかきやすい夏は、朝の脱水に特に注意が必要です。脱水状態を起こすと、血管が詰まりやすくなります。
また、午前中は人間の体が副交感神経優位のリラックス状態から、交感神経優位の仕事モードに切り替わる時間帯。もともと血圧が大きく変動する頃合いなので、わざわざお風呂に入って血圧を上下させるのは危ないといえる」