中国の電子商取引最大手アリババグループが運営するネット通販サービスから約12億件の顧客情報を違法に収集したとして、IT企業の経営者ら2人が中国当局に摘発され、6月3日に開かれた裁判で、それぞれ3年3カ月と3年6カ月の懲役刑を言い渡されていたことが明らかになった。この影響で、アリババの株価も落ち込み、顧客離れも進んでいるという。ブルームバーグ通信などが報じた。
中国河南省商丘市華陽区の裁判所の判決によると、IT企業の経営者ら2人は、一昨年11月から去年7月にかけて、独自に開発した情報収集ソフトを使い、アリババグループが運営するネット通販サービス「タオバオ(淘宝網)」から顧客ID、ニックネーム、携帯電話番号などを含む約12億件の顧客情報を窃取。2人はそれらの情報を利用して、独自に顧客を開拓し、商品を売りつけるなどして、約34万元(約580万円)の利益を得ていた。
タオバオは昨年7月6日から13日にかけて、1日平均約500万件もの顧客情報が窃取されていたことに気付き、昨年8月14日に警察に通報。警察は直ちに2人を逮捕した。
裁判で2人は「市民の個人情報を侵害した」として有罪判決を受け、現在、服役している。
アリババグループは「今回の事件で窃取された顧客情報は売却されておらず、ユーザーは漏洩による経済損失をこうむっていない」と発表している。
中国ではこの6月10日、データ収集などの行為が国家の安全を害すると判断された場合に、国外の企業でも法的責任を追及する「データ安全法」が成立しており、今回の事件はその典型例として、報道機関に公表されたとみられる。
その一方で、アリババについては、電子決済サービス「アリペイ」運営のアント・グループが独占禁止法違反と認定され、今年3月には独禁法違反としては過去最大となる182億2800万元(3000億円)の罰金が科されるなど、金融当局から大幅な規制を受けている。今回の顧客情報の流出事件に関しても、当局による意図的な情報操作があったのではないかとの見方も出ている。