これまで、暗号資産(仮想通貨)への取り締まりを度々強化してきた中国当局が6月中旬、内モンゴル自治区や青海省に続き、四川省でも暗号資産のマイニング(採掘)の規制強化を発表した。これを受け、中国ではマイニング業者の廃業や移転が相次ぎ、様々な混乱も広がっているという。中国の経済、社会に詳しいジャーナリストの高口康太さんがリポートする。
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「水力発電所売ります!発電機2台で合計出力は1000キロワット。お値段は888万元(約1億5000万円)です!!!」
「出力160キロワットの水力発電所売ってます!書類そろってるんで合法物件ですよ」
“中国版メルカリ”こと、中古品売買サイトの閑魚(シエンユー)で水力発電所が売られている。日本のメルカリもいろんな品物がそろっているが、さすがに発電所は売っていない。というか、アプリで発電所を買おうという人もいないだろうから、出品しても無駄だろう。さすが中国、スケールが壮大というかなんというか……。
もっとも、さすがの中国といえども、中古品販売サイトに水力発電所が出品されるのはそうそうあることではない。ところがこの1か月ほど急に出品が続いたという。一体何が起きているのだろうか?
答えは意外なところに結びつく。ビットコインをはじめとする暗号通貨だ。
暗号通貨はマイニングと呼ばれる作業によって運用されている。コンピューターによってきわめて難易度の高い数学的パズルを解くことを指すが、これにより安全な取引が保証され、新たな暗号通貨が生成される。
中国は世界一のマイニング大国だが、マイニングにはとにかく膨大な電力が必要となるため、電気代が安い地域を移動している。冬は内モンゴル自治区の石炭発電か、新疆ウイグル自治区の天然ガス発電に頼り、夏の増水期になると水力発電所が豊富な四川省へと移動する。四川省はチベット高原に隣接しており、水が豊かな土地だ。ここで小さな水力発電所を買って、マイニングにいそしむ事業者が多かったという。
マイニングのためのコンピューターはコンテナに詰め込まれており、トレーラーで簡単に移動できるようになっている。年に2回、季節の変わり目には四川省と内モンゴル自治区の間を暗号通貨キャラバン隊が大移動するわけだ。このキャラバン隊に同行するのが筆者の夢だったのだが、どうやら実現できずに終わりそうだ。