生きる希望が見つからないような状況のとき、人はどうすればいいのだろうか──。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、緩和ケアや在宅医療の現場で見聞きしたことから、“生きる希望”につながる“今ここ”という感覚について考える。
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コロナ下、アメリカのインディアナ大学が、18~94歳の米国成人約1000人を対象に、オンライン調査を行ったところ、約3分の1にうつ症状と孤独感が認められた。
うつ症状や孤独感を低下させるには、対面で人と頻繁にコミュニケーションをもつことが有効と言われているが、リモートによるつながりではあまり効果が認められないという。なんとなく、もどかしい。物足りない。画面越しのコミュニケーションは、対面とは質的に異なるのだろう。
しかし、まったくダメというわけではない。使う我々の側も次第に慣れてきたこともあって、いい具合に、雑談ができるくらいには使いこなせるようになってきたように思う。
雑談のなかにはヒントがたくさんある
この連載の担当者とも3週間に1回程度、ZOOM会議を開いている。議題を決めず、それぞれが気になっていることを話す、ブレインストーミングスタイルだ。コロナ前、年に数回、会食をしながらそんな機会を設けていた。コロナになってから必要に迫られてリモート会議をするようになったが、むしろ頻回に意見交換できるようになった。
先日のZOOM会議で、酒好きの編集O氏が、「酣(たけなわ)」という言葉が気になると言いだした。「酣」とは、「真っ盛り」という意味。だが、「宴も酣ですが……」というように、たいていは終わりを迎えようとしているタイミングで用いられる。真っ盛りの時が終わりの予感とともに訪れるというのは、人生も同じだと思い、数回前のこの連載で、作家の佐野洋子さんの人生最後の物欲について書いた。
そのO氏が今度は、「而今(じこん)」という言葉を口にした。「今、この一瞬」という意味だという。難しい言葉を知っているなあと感心していたら、人気の日本酒の銘柄だそうだ。
もっと詳しく知りたいと思い、ネットで検索していたら、「而今」という名の油そば屋が出てきた。ぼくは油そばが結構好きで、江戸川橋近くの東京麺珍亭本舗にはときどき行く。酢とラー油を混ぜ合わせながら、少ない汁を絡ませて食べるシンプルな油そばだ。