花田光司氏(元横綱・貴乃花親方)の長男で靴職人の花田優一氏に週刊誌記者・西谷格氏が弟子入りし、靴作りの修行中の出来事をレポートする異色の“交換日記”連載企画。第3回となる今回は、教えを請う立場の西谷氏が優一氏から週刊誌の仕事について「返答しづらい」逆質問を受けて……(別稿で優一氏本人のレポートあり)。
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修行に行く数日前、優一氏から電話をもらい、浅草で革製品を加工する道具や牛革を買い出しに行く必要があると言われた。
「自分で用意した道具や材料を使ったほうが、愛着のあるものが作れると思うんです」
指定された浅草の皮革用品専門店に行くと、教室2つ分ほどの店内には、今まで見たことのない様々な材料や器具が並んでいた。言われるがまま、ペンや物差し、金槌やペンチなどをカゴに入れた。優一氏は靴職人として開業した5年ほど前から、この店と付き合いがあるという。お店のスタッフの方たちとも顔なじみで良好な関係を築いているようだ。
すぐ近くの別の店では、優一氏はスタッフたちと一層親しい関係のように見えた。30歳前後の店主は優一氏の姿を見て顔をほころばせている。優一氏にとっては、恩人のような店らしい。
「靴職人として独立した直後は、どこに行っても若いからって革を売ってもらえなくて大変でした。でもこのお店は違って、僕の熱意を買ってくれたんです。お店の名前も、出してもらって大丈夫ですよ」
店名は「フジトウ商事」という。店内に置かれた様々な色の皮革はどれも巨大で、畳1枚ほどの大きさ。何をどう選んだら良いのか見当もつかないので、言われるがまま牛革1枚と豚革1枚を購入した。色だけは自分で黒色を選んだ。牛革は牛一頭の半分のサイズ(右半身と左半身)ごとに売られていて、今回購入した牛革は1枚2万円、豚革は1万円ほどだった。この牛革1枚で、10足ほどの靴が作れるという。
皮をテーブルに広げると、牛の頭や足、尻などの部位がはっきりと分かる。普段はほとんど意識しないが、牛革というのは生き物の皮なのだと実感させられ、牛さんありがとうという気持ちになる。食べ物を粗末にしてはいけないのと同じように、革も大事に扱わなくてはと感じた。
店の奥から、先代と思しき年配の男性が現れ、優一氏に声をかけた。
「優ちゃん、調子はどうかい?」