《おれはゴキブリに食べられて死ぬ!》。5月のある夜、神奈川県の主婦・下野琴美さん(55才・仮名)のスマホに、東京でひとり暮らししている会社員の息子からLINEがきた。アパートで「ありえないくらいでかいゴキブリが出て、殺虫剤が効かない、見失った」と、電話口で半泣き……。害虫駆除会社フリーマンの福永隆さんは、家飲みやリモートワークが浸透したことで、害虫被害が前年の1.5倍以上にもなっていると話す。
「大きなクロゴキブリは、本来、冬の間は冬眠するもの。しかし、この冬は人間がずっと家にいて、暖房が効いていたので、冬眠せずに繁殖していたのでしょう。そんな中、頻繁に家飲みをすれば、生ゴミや食べかすがたまり、ゴキブリの天国になるのです」
家飲みの増加に伴って増えた“招かれざる客”はほかにもいる。2020年4月、福岡県北九州市の繁華街で、ネズミが大量発生したことがニュースになった。彼らのえさ場だった飲食店が軒並み休業したことで、食べ物を求めて人通りの減った街中に出てきたのではないかといわれている。
「家に入ってくるのは、殺鼠剤が効きにくいクマネズミ。頭がよく、1~1.2mくらいなら平気でジャンプする強敵です。キッチンの生ゴミなどを狙うノミバエや、これまでは飲食店に多かったショウジョウバエも増えています。すばしっこくて仕留めるのが難しく、10日~2週間程度で成虫になる」(福永さん・以下同)
害虫(やネズミ)は、侵入経路になる玄関ドアやアルミサッシの隙間、エアコンのドレンホースなどを専用のキャップや隙間テープでふさぐことで、いくらか予防になる。しかし、予想もつかない場所から入ってくることも少なくない。
「網戸を閉めていても、網目が粗ければコバエは簡単に入ってきます。ゴキブリは、大きなものでも、数ミリ程度の隙間があれば、たとえマンションの5~6階であっても侵入する。ネズミも、五百円玉くらいの大きさの穴があれば入ってきます」