2021年3月場所後、日本相撲協会理事長の諮問機関である「大相撲の継承発展を考える有識者会議」(委員長=山内昌之・東大名誉教授)は、八角理事長(元横綱・北勝海)に提言書を手渡した。
そこには、横綱・白鵬が一代年寄りの〈名乗りを認める根拠は見出されない〉、さらに名指しこそしていないが、〈外国出身力士が勝ってガッツポーズをしたり、(中略)優勝インタビューで万歳三唱や三本締めを求めた時などは、(中略)少なからぬファンが違和感を覚えると同時に失望してきた〉といった記述があり、白鵬の言動を批判する文言が数多くあった。
有識者会議のメンバーである作家の阿刀田高氏に、改めて白鵬についての見解を尋ねると、「ある意味、(引き際は)個人の自由に関することですから」と前置きしつつ「懸念を吹き払うような潔い引退を期待したい」と答えた。ただ、こうした有識者の指摘が、どこまで白鵬に届くかは分からない。
昨年11月の九州場所後の横綱審議委員会の定例会合では、この1年は途中休場を含めて6場所連続休場となり、休場が多すぎる白鵬に対して「引退勧告」に次いで重い「注意」が決議されたが、その後も休場を続けた。
「これまでも、優勝インタビューで万歳三唱や三本締めをしたり、平気で審判批判したりと問題行動を繰り返してきた。格下の相手を立ち合いからカチ上げと張り手で潰しにいくなど、横綱としての品格が伴っていないと指摘された行為は数知れない」(ベテラン記者)
2019年末の会見では、横審からカチ上げなどに苦言を呈されていることを質問されて、「そんな話が出たんですか、全く知らなかった」と応じたうえで「自分は自分の相撲を取るだけ。禁じ手というものでもないので」と意に介さない様子だった。
暴力事件での責任も曖昧に
2017年9月場所後の巡業中に起きた、モンゴル出身力士らが集まった会合での当時の横綱・日馬富士による関取・貴ノ岩への暴力事件の際も、その場で最も先輩格にあたる白鵬の責任を問う指摘は多かった。
「膝を故障している照ノ富士に対して、白鵬が長時間の正座を強いたという話もあったが、責任の所在は曖昧になり、日馬富士だけが廃業させられた」(同前)