ドキュメンタリー映画『息子のままで、女子になる』(東京、名古屋、大阪ほか全国順次公開)が大きな反響を巻き起こしている。スクリーンに登場するトランスジェンダーで建築家のサリー楓(27)は、映画を通じてどのようなメッセージを発信しているのだろうか。本人に話を聞いた。
6月に公開された『息子のままで、女子になる』は、就職を目前に、男性として生まれたが、女性として生きていくことを決意したサリー楓の姿を追ったドキュメンタリー作品。社会に進出してセクシャルマイノリティの可能性を広げようと活動する姿と、複雑な表情を浮かべる父親とのプライベートな関係を収めた、批評的でリアリティ溢れる内容に仕上がっている。
近年では多様性を重視する社会の傾向もあって、セクシャル・マイノリティに関するいわゆるLGBTについては一般的に広く知られるようになってきた。一方で世界と比較すると日本は“LGBT後進国”と指摘されることもあるように、同性婚などの法整備が遅々として進んでいないという現実もある。こうした状況についてサリー楓はこのように語る。
「数年前はLGBTという言葉の意味をまずは説明しなければならなかったんですが、最近はみなさん知ってくださっているので、その先の一歩踏み込んだ議論ができるようになりました。東京レインボープライドというパレードの参加者も増えましたし、LGBTフレンドリーを掲げる企業も増えたと思います。
一方、やっぱり政治家などの失言があると『まだまだだな』と思ってしまいます。『今さらこんな言い回し?』と思うこともあって、まだ何がNGなのかという感覚が浸透していないんだなと。LGBTという言葉は広まりましたけど、言葉だけが一人歩きしてしまっているところもあると思います」(サリー楓)