コロナ禍での外出自粛や飲食店への休業要請により増加したのが家飲み。気楽に、しかも安上がりに気分転換ができる一方で、重大な問題にもつながりかねないとの指摘もある。
内閣府の発表では、2020年度のDV被害報告は、過去最多の19万30件。今年に入ってからは、ひと月ごとの相談件数が最も多かった3月で1万7320件にものぼり、その多くが、飲酒時に起こっているという。
さらに、DVだけでなく、アルコール依存症のリスクも上がっている。沖縄県の比嘉恵さん(57才・仮名)が告白する。
「昨年の緊急事態宣言のときから、毎晩のように夫婦でお酒を飲んでいました。いまでは、もともとお酒好きの夫よりも私の方が酒量が多いほど。
ところが、最近、日中もつい飲んでしまうことが増えているんです。昼食の支度をしているときも、おかずをつまみにビールを開けるのが当たり前になっていて……」
東京慈恵医科大学教授の横山啓太郎さんは、女性は男性よりもアルコール依存症になりやすいと話す。
「現在、高齢者と若い女性のアルコール依存患者が増えています。1日でビールなら1500ml、日本酒なら3合程度飲み続けていると、10~20年ほどで依存症になるといわれていますが、女性は半分くらいの期間で依存症になる。事実、この1年間の飲酒量は、男性には変化はありませんでしたが、女性だけだと増えていることがわかっています」
飲酒が習慣化してから依存症になるまでは年月がかかるが、このまま飲み続けていると、近い将来依存症や急性アルコール中毒を引き起こす可能性は充分にある。
また、警視庁によれば、飲酒運転による事故は過去10年間では減少傾向にあったが、このコロナ禍で下げ止まりに。愛知県では昨年10月末までですでに1137件。前年同月比23%増と、地域によっては検挙数が激増している。
「飲酒量が増える原因は、ストレスや寂しさ。“飲まなきゃやってられない”と思うかもしれませんが、過度の飲酒は“自傷行為”です。日々の行動は、3~6か月ほどで習慣化する。もう1年以上コロナが流行しているいま、“コロナだから”というのは深酒する言い訳にはなりません。1日につき缶ビール1本までなら、健康に害はないといわれています」(横山さん)