新型コロナウイルスによる大不況下にもかかわらず、今年5月に発表された2020年におけるドラッグストア業界の売り上げは過去最高を記録。その金額は約8兆円にもなる。感染対策で病院へ行くこともままならない中、いかに私たちが薬を頼りにしているかの表れといえるだろう。しかし、この状況を懸念する医師は少なくない。クリニック徳院長の高橋徳さんが言う。
「薬は一時的に症状を和らげてくれますが、根本的な解決にならないことも多い。それどころか、薬ののみすぎで新たな不調が生じるケースもあります。診察のもとで提供する処方薬であっても、病名を特定せずに“とりあえず”で出す医師も存在する。自分ではのまない薬を処方している場合すらあるのです」
つまり重要なのは何をのむかではなく“何をのまないか”。体を酷使して病気と対峙する医師たちには、あえて「のまない」薬があった──。
総合感冒薬でかぜが長引くことも
複数の医師が「のまない」と口をそろえたのが、倦怠感や寒気、のどの痛みなどかぜの諸症状に効果があるとされる総合感冒薬だ。朝倉医師会病院・呼吸器内科医の佐藤留美さんは必要のない成分まで体に入れてしまうことを懸念する。
「発熱からせきやたんまで、一般的なかぜの症状を緩和するための成分がバランスよく配合されています。そのため、服用すればどんなかぜ症状が出てもある程度は対処できます。しかしそれゆえ体に必要のない成分まで取り入れてしまうことになる」
ナビタスクリニック川﨑の内科医・谷本哲也さんも総合感冒薬は手元に置いていない。
「市販の総合感冒薬は、含まれる鎮痛作用や解熱作用は病院で処方される薬よりはどうしても弱くなります。そのうえ、種類によっては眠気が出たり依存性があったりするものもある。簡単に入手できますが、取捨選択が必要です」
谷本さんは、熱や頭痛を抑える解熱鎮痛薬の中にも、のまないものがあると語る。
「市販の頭痛薬などに配合されるロキソプロフェンナトリウムは、効果が高い一方で胃を荒らしやすく、安易にのみ続けた場合、消化器官に潰瘍ができて出血を起こしたり、腎臓の機能を低下させたりする危険性があります」