新型コロナウイルス感染後とワクチン接種後の抗体量を比較したところ、ワクチン接種後のほうが、約60倍も多いことがわかった。またワクチンの副反応として発熱や頭痛、筋肉痛、咳などの全身症状がみられたほうが局所的、もしくはないより、抗体量が多いことも判明した。なにより新型コロナ対策にとって重要な集団免疫獲得までは検査の継続が欠かせない。
インターネットやドラッグストアなどで購入可能な抗体検査キットは抗体の有無を確認できるといわれていても、その精度は低い。検査で感染抑制効果を計るには中和抗体の計測が必要だが、中和抗体検査は厳格にウイルスを管理するバイオセーフティレベル(BSL)3という特別な実験室でなければ実施できない。
そこで富山大学と富山県衛生研究所が共同で、通常のバイオセーフティレベル2の実験室でも、中和抗体検査が可能な評価法(CRNT法)を開発した。
富山大学学術研究部医学系微生物学講座の森永芳智教授に詳しく話を聞いた。
「CRNT法には感染力の低い、別のウイルスの表面に新型コロナのスパイクタンパクを付けた測定用シュード(似せた)ウイルスを使います。培養液にシュードウイルスと感染可能な細胞を一緒に入れるとウイルスは細胞に感染し、細胞内にウイルスの遺伝子が入ります。その遺伝子は事前に光るように加工しているので、細胞内に取り込まれた光りを測定することにより、感染がわかる仕組みとなっています。
そして、そこに血液(血清)を入れるのですが、中和抗体があると感染を邪魔します。結果、細胞内に入り込むウイルス遺伝子が少なくなるため光りは弱くなる。例えば中和抗体がないときの光りの強さを100としたら、1は99%感染を阻害した─―という意味になります」
森永教授らはCRNT法と従来の抗体検査の両方で、感染後とワクチン接種後における抗体の量と中和抗体による感染抑制効果を比較してみた。対象は病院受診患者を含むヒトの血清(新型コロナ感染者74人、陰性170人、健常者229人)とワクチンを2回接種して2週間経過した医療従事者740人(20~69歳)の血清を使用した。
ワクチン接種後の全例で2つの検査とも陽性(抗体獲得)を示し、CRNT法で評価した中和抗体は全例で99%と高い値を示した。さらに感染後の抗体の量と比較しても、60.3倍も多かったのだ。