フィギュアスケート選手にとって、五輪シーズンは特別な年である。今年の4月、「(来シーズンは)自分の限界に挑戦したい」と意気込みを示した羽生結弦選手にとってはなおさらだ。新型コロナウイルスの感染拡大にあたり、持病の気管支ぜんそくや後遺症への懸念を示し、昨年は欠場を決めたGPシリーズに2季ぶりに参戦することになった彼を待ち受けるものとは──。
7月1日、フィギュアスケートの2021~2022年シーズンが初日を迎えた。この日、日本スケート連盟は2021年度強化選手の紹介ページを公開。そこに名を連ねた羽生結弦選手(26才)は、「今シーズンもより高みを目指して頑張ります」とコメントを出した。
それに先立つ6月29日、国際スケート連盟はグランプリ(GP)シリーズのスケジュールと出場選手を発表したのだが、羽生選手にとって“厳しいカレンダー”になっていた。GPシリーズは毎年10月下旬から11月下旬にかけて6戦が行われ、各選手はそのうち2戦に出場。順位に応じてポイントを獲得し、ポイント数が多い上位6選手がGPファイナルに駒を進めることができる。
どの試合に誰が出場するかは、ポイント獲得とGPファイナルに向けた調整に大きな影響を与えるが、どのように決まるのか。元アイスダンス選手で、現在はコーセー新横浜スケートセンター専属インストラクターの木戸章之さんはこう語る。
「世界ランキングを考慮したうえで、最終的には国際スケート連盟が割り振りを決めています」
今シーズン、羽生選手は第4戦のNHK杯と第6戦のロシア杯に出場することが発表された。
「ロシア杯の開催地であるソチは、2014年に羽生選手が初めて五輪で金メダルを獲得した地。羽生選手が出場するとあって、地元ロシアは大いに盛り上がっています」(スケート関係者)
しかし、その陰で、スケート関係者の間からは、「スケジュールが不公平すぎる」という声が上がっていた。ある関係者はこう断言する。
「はっきり言って、米国のネイサン・チェン選手(22才)に有利、羽生選手には断然不利なスケジュールです」
ネイサン選手が出場するのは、第1戦のスケートアメリカと第2戦のスケートカナダだ。
「ネイサン選手は試合出場のための移動距離が最短で、しかも、大阪で行われるGPファイナルまでには2戦目から38日間も余裕がある。かたや羽生選手は、2戦目のロシア杯からたった10日しかありません」(前出・スケート関係者)
しかもGPファイナルの後には、さいたまスーパーアリーナで開催される全日本選手権が控えている。
「GPシリーズ初戦のNHK杯から全日本選手権までのわずか1か月半の間に、羽生選手は4つの大会に出場しなければならない。あまりにも過酷なスケジュールで、“陰謀だ”という声さえ聞こえてきます」(前出・スケート関係者)
過去のGPシリーズを振り返っても、羽生選手はタイトな試合日程に泣かされてきた。2018年は第3戦のフィギュアスケートヘルシンキ(フィンランド11月3~5日)、第5戦のロシア杯(11月16~18日)を連戦。痛めた右足首の回復が間に合わず、17日後に迫ったGPファイナル(12月7~10日)は欠場を余儀なくされた。